新型コロナウイルスの出現によって、過剰ともいえるほど「除菌」「抗菌」「殺菌」という言葉に敏感になった。医師で腸内環境評論家としても活動する桐村里紗さんが、「菌」と「ウイルス」の違いについて解説する。
「細菌もウイルスも人間の肉眼では見えず、総称では『微生物』の範疇に入ります。細菌とウイルスのほかに、寄生虫、原虫、真菌(カビ)なども微生物に含まれます」
微生物は、外部から栄養を得て、エネルギー活動をし、排泄物を出す。栄養源があれば自分で増殖することもできる。ただし、ウイルスは例外となる。
「ウイルスは外側からエネルギーを得ることや、排泄することはありません。このことから、『生物と無生物の間の存在』と位置づけされています。ウイルスは、遺伝に携わる『DNA』と『RNA』という物質を入れる“箱”にすぎず、宿主となる人間などの生物に感染し、その細胞の中で増やしてもらって生命を維持します」(桐村さん・以下同)
一般的に、大きさも、細菌よりウイルスの方がはるかに小さく、同じ微生物とはいっても、まったく別ものだ。さらに、私たちはよく「ばい菌」という言葉を使うが、これも正確に言うと「細菌」や「ウイルス」とは異なる。
「人体を含め、細菌はあらゆるところに存在しますが、その中で人間にとって病原性を持つものが一般的に『ばい菌』と呼ばれています。ウイルスに対しても、体に害を与えるものは、ひとまとめに『ばい菌』と呼ばれている印象です」
目に見えず、普通に生活する分にはなかなか意識することはないが、細菌は私たちの体の内外に存在し、人間は細菌と共に生きている。「ばい菌」のイメージから、細菌を悪いもののように感じる人もいるかもしれないが、病原性を持つ細菌はごくわずかしかおらず、私たちを守ってくれる菌は多い。
※女性セブン2021年9月30日・10月7日号