放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。タナダユキ監督作品『浜の朝日の嘘つきどもと』で、“いい出汁”を出している大久保佳代子についてつづる。
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ビートたけしを“つるはし”で襲撃という衝撃が走った今週、ジタバタしてこのコラムも駆け足で「芸能アラカルト」。
まず〈映画部門〉心がホカロンになったのが、いい映画を撮るのでおなじみのタナダユキ監督作品『浜の朝日の嘘つきどもと』。一度きいただけじゃタイトルを覚えられないというのが凄い。
福島県南相馬に古くからある映画館「朝日座」。大正12年にできたとか。戦後、映画全盛になるも東日本大震災、福島の原発事故そしてこのコロナである。ボンヤリする支配人、これがなんと“落語界のキョンキョン”と呼ばれここ数年、調子づいてる柳家喬太郎。この映画館を立て直す為にやってくるのがお待たせ高畑充希。この高畑にあれこれ人生を教えちゃう高校教師が大久保佳代子という意表をついたキャスティング。さすがオアシズ、相方は今どこへ。この大久保が男にだらしなくて惚れちゃすてられ、やっちゃすてられ、それでも……大久保が五十女の切なさ可愛いさを好演。いい出汁が出ている。
〈ゲスト部門〉私のラジオにキャンディーズのランちゃんだった伊藤蘭がニューアルバム『Beside you』を持ってやってくるも、ゲストコーナーとして用意した40分間、ただひたすら笑っているだけ。旦那もよく来てくれるのだが、ズーッと笑ってるだけで『相棒』の時のように紅茶も入れずに帰っていく。ゲラとゲラの夫婦。笑う夫婦。それでも9月26日、日比谷野音、10月28・29日は中野サンプラザでコンサート。大阪でもやるようだ。笑っちゃいられない。
〈ラジオ部門〉ニッポン放送では昼私が喋って1時からナイツ。10月の2日(土曜日)からはサンドウィッチマンが1時からタップリ毎週2時間「何言ってるかわからない」トークをくり広げる。土曜の昼下りもニコニコ安泰。いまラジオ界に新しいリスナーがどんどん増えてきて三周まわってベテランの私が逆に新鮮らしい。あんまり自分の身の回りにこんなふざけた73歳いないものな。
〈テレビ部門〉ここ1か月間くらい毎週見てるんだがひっそり始まってた『紙とさまぁ?ず』がメチャクチャ東京味で面白い。たしか月曜の深夜0時前後、テレ東だと思った。「所詮俺達、関東ローカルの芸人だからな」とチクチク関西をからかうのも面白い。
〈訃報部門〉「ミスターショウアップナイター」元ニッポン放送の達人・深沢弘氏が亡くなった。長嶋茂雄氏の盟友だった。享年85。そしてジャン・ポール・ベルモンドも。享年88。うまい人からいなくなる。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年10月1日号