女子ゴルフの国内ツアーが大きく変わりそうだ。長く「賞金ランキング50位以内なら翌年のシード権(出場資格)獲得」という仕組みが定着していたが、それが来シーズンにもなくなると報じられている。
「賞金ランキングには実力が正確に反映されないとの批判が根強くあった。たとえば『マスターズGCレディース』『アース・モンダミンカップ』などは国内メジャーより賞金が高い。是正するために“ポイント制”の『メルセデス・ランキング』が生まれ、昨年からシード権付与の基準として賞金ランキングと併用されている。ここからさらに、賞金ランキングによるシード権を廃止する方向なのです」(担当記者)
メルセデス・ランキングは「国内メジャー優勝は400ポイント」「レギュラーツアーの4日間競技優勝は300ポイント」などと各大会の順位がポイント換算される。
「注目は年に5戦ある海外メジャー大会は優勝なら800ポイントといった具合に比重が高いこと。海外で活躍できる選手はより有利になる」(同前)
たとえば、渋野日向子(22)は2020年12月の全米女子オープンで「4位」に入り、国内の4日間競技の「優勝」に匹敵するポイントを稼いだことでメルセデス・ランキング11位に浮上。この時点で日本ツアーの賞金ランキングは35位だった。
そうなると、東京五輪銀メダリストの稲見萌寧(22)ら国内ツアーを主戦場にしている選手が、どんどん海外に出て行ってしまう懸念はないのか。
「もともと国内志向の稲見は“30勝して永久シードを目指す(現在9勝)”と公言してきたし、東京五輪の銀メダルで5年シードを手にしたので当面はシード権争いとは無縁。ただ、海外メジャー挑戦を奨励する流れは明らかなので、ランキング1位を目指して海外メジャーや調整のためにその前後の大会に挑戦する機会も出てくるだろう。そこで日本を飛び出しての戦いの魅力に目覚める可能性はある」(ツアー関係者)
制度変更の詳細はまだ発表されていないが、プロゴルファーの沼沢聖一氏はこう指摘する。
「ランキングが一本化されれば、海外進出が増えて日本の女子ゴルフのレベルは上がるだろうが、海外ツアーに参戦できるプロは限られるため、そこにも不公平は生じる。ある程度準備期間を設けるべきではないか」
世界に羽ばたいてほしいが、国内の試合会場での活躍も見たい。ファンとしては複雑な制度変更かもしれない。
※週刊ポスト2021年10月1日号