一般的に、ウイルス感染症は温度や湿度など気候の変化によって流行の度合いが変わるとされる。例えば日本で季節性インフルエンザが流行するのは、気温が低下し空気が乾燥する冬から春先にかけてだった。
2019~2020年の冬(北半球)に感染が始まった新型コロナウイルスも、流行初期には高温多湿の気候になれば、やがて収束すると予想されていた。
結局、新型コロナは高温多湿の時期に「第2波」「第5波」が到来。9月に入り、厚生労働省にコロナ対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」は、「全国の新規感染者数はほぼすべての地域で減少が続いている」との見解を示し、その要因としてワクチン接種の進展や緊急事態宣言による人流減少などに加え、「気温の低下」を挙げた。
ただし、これは気温の低下により「エアコンの効いた密閉空間で過ごす時間が短くなった」ことで感染を抑制した可能性があるとする指摘だった。
季節と新型コロナの関係は、実際のところどうなのか。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう言う。
「確実な答えは誰にもわかりませんが、従来、日本では9月、10月に風邪をひく人は少ないことが知られています。新型コロナの特性として夏と冬に活性化するのかもしれないし、8月の人の動き方で何かが影響したのかもしれません。人の流れなどによる影響が大きいのが感染症ですから、行動様式が変われば結果も違ってきます」
気温がウイルス流行にどう影響するのか。いまだ不明な点は多い。
※週刊ポスト2021年10月1日号