朝ご飯の定番といえば、こんがり焼けたトースト──和食に比べて手間もかからないので、手軽なパンを好む家庭は多い。しかし、複数の専門家が「朝はパン」という習慣は、健康を害するリスクがあると警鐘を鳴らしている。
消化管の専門医として長年、消化管外科手術や内視鏡検査、内視鏡手術に携わってきた、みらい胃・大腸内視鏡クリニックの福島正嗣院長は、自身のブログに〈朝食はパンと決めている方へ 胃腸の不調はそれです。〉との記事を掲載した。福島氏が指摘する。
「パンは消化が悪い食べ物です。胃液の主な成分はタンパク分解酵素。意外に思われるかもしれませんが、肉や魚などのタンパク質に比べて、炭水化物であるパンのほうが分解・消化されにくいということを臨床経験のなかで私は実感しています。炭水化物の消化には5時間から10時間かかるとされています」
下痢、頭痛、認知症に…
「パンはNGだが、米ならOK」という考え方の専門家もいる。
「個人差がありますが、小麦に含まれるグルテン(※注)が原因で、食後の腹痛や下痢などの消化器系疾患、頭痛、不眠症に悩まされているケースは多い。グルテンがアトピーも含む肌荒れや生理不順、メタボや認知症の原因になっている可能性もあります」
(※注/小麦粉に水を加えてこねた時に、小麦粉に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という2つのタンパク質が絡み合ってできるもの。パンのもちもち感や粘り気はグルテンによるもので、こねればこねるほどグルテンが増えていく)
そう話すのは、グルテンフリーライフ協会代表理事で『長生きしたけりゃパンは食べるな』(SB新書)の著書があるフォーブス弥生氏である。
グルテンフリーといえば、プロテニス選手のノバク・ジョコビッチが実践して体調不良によるスランプを脱し、世界ナンバーワンプレーヤーとなったことで一躍注目を浴びた。
グルテンが原因となる体の不調には、アレルギーのほか、グルテンが小腸にダメージを与える自己免疫疾患のセリアック病、発症原因は解明されていないが、セリアック病とは診断されず、セリアック病と同様の下痢や便秘、疲労感などの症状を引き起こすグルテン不耐症がある。
フォーブス氏がグルテンフリーライフ協会を設立したのも、夫がグルテン不耐症と判明したのがきっかけだったという。
「私もパンやパスタ、スイーツが好きで、パン屋さんの前を通ると、匂いに惹かれてついパンを買ってしまっていた。グルテンの成分のグリアジンには依存性があり、“なんとなく食べたくなってつい食べてしまう”“食べ出したら止まらない”という特性があります。日常的に食べていたのは依存性が高まっていたためでしょう」(フォーブス氏)