中国大陸での内戦に敗れ、台湾に渡った元総統、蒋介石(1887~1975年)を顕彰する施設「中正紀念堂」について、台湾行政院(内閣に相当)直属機関は9月上旬、施設内の巨大な蒋介石の銅像を撤去し、敷地全体を「権威主義への反省」を軸とした歴史公園に生まれ変わらせる案を発表したところ、賛否両論が噴出している。
ネット上では、蔡英文総統ら与党・民主進歩党(民進党)による「台湾式文化大革命だ」との反対意見が出る一方、「蒋介石は台湾で白色テロを行うなど、残忍な犯罪を行っており、記念堂で民衆の支持を受けるという栄誉を受けるのに値しない」などとの論争が巻き起こっている。中央通信社など台湾メディアが報じた。
蒋介石像撤去などの案は、国民党独裁期における人権侵害の真相究明などを目指す「移行期の正義促進委員会」(促進転型正義委員会)が発表した。台北市にある中正紀念堂を「権威主義への反省」を軸に歴史教育の生きた教材として、「歴史公園」に生まれ変わらせる計画を明らかにした。
委員会は転換案の背景について、民主主義国家として、中正紀念堂という巨大な権威主義の象徴にどのように向き合うかという問題に対し、「権威主義を取り除く」と同時に「歴史を直視」できることが最も重要だと強調している。
これについて、ネット上では「神を破壊しようとする者は、まず彼らを狂わせる。覚えていませんか? アフガニスタンのタリバンがバーミヤン遺跡の仏像にしたことを考えてみてください。台湾の現政権(民進党)がどのようなものか分かることでしょう」との蒋介石支持者の声が紹介されている。
一方、賛成派は「蒋介石と中国大陸の内戦で対立した中国共産党の毛沢東は、今でも記念碑の中で赤い旗を掲げて眠っています。この2人の指導者は、ともに独裁者であり、毛沢東は文化大革命で約1000万人の死者を出したといわれている。蒋介石も多くの台湾人の命を奪ったという事実は消えない」と蒋介石像の撤去を支持している。
また、「民進党は中国共産党のように古代中国の文化を破壊しようとはしていない。民進党は独裁者の銅像を撤去するという正しいことをしているだけだ。いつか中国人は毛沢東の肖像画やシンボルなどをすべて撤去するだろう。そして、習近平の肖像画もだ」などとの声も出るなど、中国をも巻き込んだ政治論争に発展しつつあるようだ。