「菌活」がブームになっている。人間の体には、体内と表面を合わせて100兆個もの細菌が存在するともいわれており、その細菌とうまくかかわっていくことが健康維持に欠かせないという。
人の体に存在する菌の中でポピュラーなのが「腸内細菌」。腸内細菌は菌の種類ごとに密集して腸壁に生息しており、その様子が“花畑”に似ていることから「腸内フローラ」と呼ばれている。
細菌がフローラをつくるのは腸だけでない。
近年、不妊治療を受ける女性は増加傾向にあり、日本産婦人科学会の発表によれば、2018年に体外受精で生まれた子供は過去最多の5万6979人。新生児の約16人に1人が体外受精で生まれたことになる。そこでも、「細菌」の存在は無視できない。医師で腸内環境評論家としても活動する桐村里紗さんが言う。
「これまで、腟内については、乳酸菌の一種である『乳酸桿菌』が『腟内フローラ』を形成していることはわかっていました。一方で、感染症にならない限り、『子宮は無菌』というのが常識でした。ところが、2015年にアメリカの大学の研究で子宮内にも乳酸桿菌がいることがわかり、その後、『子宮内フローラ』が存在することが発見されたのです」(桐村さん・以下同)
腟内フローラも子宮内フローラも、健康であれば99%が乳酸桿菌で占められる。しかし、不妊治療を受ける患者では、その数値に乱れがあった。
「ある研究では、体外受精を行う必要がある不妊患者の場合、子宮内の乳酸桿菌の割合が63.9%、腟内では65.21%まで低下していた。そして、本来は腟や子宮に存在せず、大腸で見られるような菌が多かったと報告されています」
スペインの研究では、子宮内フローラが乱れている人は、妊娠率が33.3%、妊娠継続率が13.3%、生児出産率が6.7%と極端に低いことがわかっている。子宮内フローラについては研究が進行中だが、腟内フローラの乱れは、おりもののにおいで自己判断もできる。健康ならば、乳酸菌特有の少し酸っぱいにおいがするが、大腸の菌が腟内で増えている場合、便のようなにおいや腐敗臭がする。