海外に後れをとっている日本のワクチン開発。文部科学省は国産ワクチン開発の拠点となる大学を整備し、今後10年間、研究費を支援する新事業を始めるという。
一方、厚労省のワクチン生産体制等緊急整備事業に採択されているのは、塩野義製薬(大阪市)、アンジェス(大阪府茨木市)、第一三共(東京)、VLPセラピューティクス・ジャパン(東京)、KMバイオロジクス(熊本市)の5社。うち、塩野義製薬はウイルスの遺伝情報から抗原タンパク質を作る「組み換えタンパクワクチン」を開発中。同社は3相ある治験のうち、第1/2相試験に入った。
「現在、全被験者60例への初回投与を完了し、安全上の懸念は確認されておりません(8月24日時点)。この試験結果を基に1人あたりの投与量を決定します。その後、約3000例の日本人を対象とする次相試験に速やかに移行し、安全性・有効性の評価を行なう予定です」(塩野義製薬広報部)
最終段階の試験は年内にも開始、ワクチン提供は年度内開始を目指すという。同社は「年末までに3000万人分以上の生産体制を整備」「試験の結果次第では、より多くの生産設備の増強を進める」(同前)と自信を覗かせる。
ただ、現場の医師の受け止めは様々だ。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう言う。
「モデルナは3万人、ファイザーは4万人で治験を行ないました。だが、その規模の治験が日本で行なわれたことはありません。日本の臨床試験や薬事承認の仕組みでは、“抗体価が上がっても重症化は防げない”といった事態も起こり得る。私個人は国産ワクチンへの期待は小さい」
海外製に頼る現状を憂い、国産ワクチンを待望する声が一部にはあるが、変異株の動向が読めないなか、過度な期待は禁物のようだ。
※週刊ポスト2021年10月1日号