花田光司氏(元横綱・貴乃花)の長男で靴職人の花田優一氏に、週刊誌記者・西谷格氏が弟子入りし、互いに靴作りの修行中の出来事をレポートする異色の“交換日記”連載企画。今回は優一氏の口からついに“騒動”の核心ともいえる父・貴乃花から「勘当」という言葉を聞いた時の話がこぼれた。(別稿で優一氏本人のレポートあり)。
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修行のために工房に行ったある日のランチのあとだったと思うが、優一氏は父・貴乃花から絶縁を言い渡された時のことを、不意に語り始めた。
「お世話になった方が亡くなって、父と二人でお葬式に出席したんです。焼香の場面って、家族単位でまとまって行くじゃないですか。それで式場の方が父と僕に一緒に焼香するよう合図したんです。そしたら父が『もう勘当しておりますので』と言って、別々に焼香することになったんです。いきなりそんなことを言われて、ショックでした」
いつ頃、どういう人の葬式で、どういう状況だったのか。週刊誌記者であれば、5W1Hに沿って詳しく聞くべき話だったのかもしれないが、あいにくその時、私は記者モードを完全に解除していた。食後にお茶を飲みながら、漠然と聞いていた。本来なら身を乗り出して食いつくべき話題だったはずが、むしろ、聞いてはいけない話を聞いているような気がして、聞き流してしまったのだ。
同業者であればきっと誰もが頷くと思うのだが、取材というのは不思議なもので、インタビューを終えてレコーダーのスイッチを切り、メモ帳をカバンにしまったところで急に相手がポロッと本音をこぼすことがよくある。頻繁にある。ペンを握りしめて食いつくと、相手も身構えてしまうのだろう。こちらの意識がボーッとしていてメモも取れないような状況のほうが、気楽に話せるのかもしれない。
葬儀の場面でなぜ、父・貴乃花は勘当を言い渡したのか。事情はよく分からない。優一氏が何か不義理をしたのではないかと勘繰ってしまうが、両者の言い分は平行線だ。それでも、優一氏は「父への敬意と愛情は失っていない」という。ならば、たとえば互いに手紙を書いて、思いを伝えてみてはどうだろう。週刊誌記者としては、もちろん両者のやり取りを記事にしたいという下心もあるが、そういう邪心を抜きに考えても、手紙というのは行き違った者同士の関係を修復するには、とても有効な手段のように思えた。今度優さんに提案してみようかと思う。
眠れなくて「薬」を飲むことも
最近、工房内でお茶をしている時や帰りにクルマで送ってもらう際に、優一氏はちょっと気になることを言っていた。