数多くの名作映画が登場した1980年代。映画の専門家はどの作品に魅了されたのだろうか──。映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんに、80年代名作映画の中から、3本を厳選してもらった。
『地獄の黙示録』(1980年)
「私が字幕翻訳の仕事を本格的に始めたのは、まさにこの作品からだったため、格別な思い入れがありますが、そうでなくてもすばらしい作品です。ベトナム戦争をリアルに描いたスペクタクル作品なのですが、実際にヘリコプターや飛行機を飛ばし、爆弾を爆発させて撮影しています。ですから、俳優たちの覚悟が違い、その緊迫感は画面越しでも見る人を圧倒します。そういった意味でも映画史に名を残す傑作だと思います」(戸田さん・以下同)
【DATA】
監督・製作/フランシス・フォード・コッポラ 出演/マーロン・ブランド、 マーティン・シーン、ロバート・デュバル、デニス・ホッパー ほか
【あらすじ】
ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』が原作。1960年代末、ベトナム戦争が激化する中、アメリカ陸軍のウィラード大尉(マーティン・シーン)は、軍上層部から、ある人物を暗殺する特殊任務を受ける。
『ソフィーの選択』(1983年)
「ナチスに捕えられた主人公のソフィー(メリル・ストリープ)が、2人の子供のどちらかを生かし、どちらかをガス室に送り込むという“選択”を迫られるのですが、その話を彼女が独白するシーンは涙なしには見られません。私も彼女の気持ちになって翻訳をし、胸が張り裂けそうになって泣きながら翻訳していました」
【あらすじ】
ピューリッツァー賞を受賞したウィリアム・スタイロンの同名小説が原作。作家を夢見る青年がソフィーという女性と出会う。しかし彼女には誰にも言えない秘密があり──