志村けんさん(享年70)が亡くなってから1年半、『ドリフ』がテレビ番組で“復活”する。ドリフのメンバーに加えて、人気の中堅芸人たちがドリフのコントに挑戦するのだ。今なぜドリフなのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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26日19時から放送される『ドリフに大挑戦スペシャル』(フジテレビ系)は、長年親しまれ、今年5月3日にも放送された『ドリフ大爆笑』のような過去のコント集ではありません。
今回の特番は、「ドリフを愛してやまない芸能人“ドリフ・ラヴァーズ”が名作コントに挑戦する」という異例の企画。しかも、「もしもシリーズ」などの名作コントで真っ向勝負し、さらに3時間もの長尺放送であるところに意気込みが表れています。
ドリフのコントに挑むメンバーは、サンドウィッチマン、カンニング竹山さん、劇団ひとりさん、アンタッチャブル・柴田英嗣さん、東京03・飯塚悟志さん、ずん・飯尾和樹さん、阿佐ヶ谷姉妹さんなど、実に30人超。さらにオリジナルメンバーの高木ブーさん、仲本工事さん、加藤茶さんも、「雷様」のコントなどを披露して華を添えるようです。
「ドリフ全盛期」と言われる昭和から、人々の趣味嗜好や生活習慣が大きく変わった令和の今、なぜドリフのコントに現役バリバリの芸人たちが挑戦するのでしょうか。
志村さんを亡くした今が継承のとき
この特番の放送が発表されたとき、ネット上には賛否両論の声で二分されました。
加藤茶さん本人が「正直、想像もしてなかったです。そのくらい、当時の僕らがやってきたことを超えるってことは難しいと思うし、マネできる訳がない、という自信もあった」とコメントしたように、オリジナルを超えるのは至難の業。視聴者の中にも思い入れの強い人が多いだけに、批判を浴びるリスクの高いチャレンジと言えるでしょう。
しかし、賛成派の中で特筆すべきは、「難しい所はあると思うけど、ノウハウは後世に残って欲しい」「ドリフも高齢だしいつかは居なくなる。若手が吸収して継承していくのも大事」という声の多さ。「現役バリバリの世代が今、ドリフの芸を受け継いでおかないと、もう見られなくなってしまう……」という危機感を抱いている人々がいるのは間違いないでしょう。
その上で、あらためて前述した“ドリフ・ラヴァーズ”のメンバーを見直してみると、「子どものころにドリフのコントを見て育った」という中堅芸人ばかりであることに気づくはずです。いきなりアラサーの若手芸人に受け継いでもらうのではなく、アラフィフ芸人を中心に据えているところが、「まずドリフのコントを愛し、よく理解しているこの世代に引き継ぐ」という現実的な選択であることを物語っています。
今後は、そのアラフィフからアラフォー、アラサーの世代に引き継いでいけるのか。今回の特番は、「ドリフのコントが継承芸になっていくか」の試金石のように見えるのです。
また、ドリフの中で唯一、冠番組や舞台などを精力的に行い、コントのバリバリ現役だった志村さんが亡くなったことも、「継承していかなければ」という強い思いにつながっているのではないでしょうか。視聴者は「きっと難しいだろう」「すぐにうまくいかないかもしれない」という前提で見る。制作サイドは批判があっても1度きりで終わらせずに続けていく。そんな“ドリフ・ラヴァーズ”を温かく見守る姿勢が大事なのかもしれません。