1980年代には、数え切れないほどの名作映画が公開され、映画ファンを大いに楽しませた。そんな80年代名作映画の中から、映画の専門会によりすぐりの3本をピックアップしてもらった。映画評論家の渡辺祥子さんが、どんな3本を厳選したのだろうか。
『クレイマー、クレイマー』(1980年)
「1975年まで続いたベトナム戦争で、出征した夫の代わりに女性が外に出て働くようになりました。その流れで女性の自立が叫ばれるようになり、自分自身の人生を見つめ直す女性が多くなったのが1980年代のこと。とはいえ、まだ女性が収入を得て暮らしていくにはハードルが高く、幼子を連れて家を出ることが難しい時代だったんですね。この作品では、そんな社会状況や女性の葛藤を反映しながら、残された父子が徐々に絆を深めていく過程が描かれており、心を打たれました」(渡辺さん・以下同)
【あらすじ】
主婦・ジョアンナ(メリル・ストリープ)は、仕事人間で家庭を顧みない夫テッド(ダスティン・ホフマン)と息子を残し、自立のために家を出る。残されたテッドは慣れない家事や育児に奮闘しつつも、息子との絆を深めていく。しかし、仕事を得たジョアンナから息子を引き取りたいと要求され──。
『グロリア』(1981年)
「まず何より主人公の女性・グロリアがタフでかっこいい! 銃だけでなく知恵も武器にして、小さな男の子をマフィアから逃がすのですが、その子がグロリアのタフさに惚れちゃって、“オレが守ってやるよ”なんて生意気なことをいう(笑い)。それがかわいくて!! グロリアと男の子の間に友情が芽生えるのも痛快でした」
【あらすじ】
子供嫌いの中年女性グロリア(ジーナ・ローランズ)が、マフィアの秘密を握る少年(ジョン・アダムス)を守るために奮闘する。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した。
【DATA】
監督・脚本/ジョン・カサヴェテス 出演/ジーナ・ローランズ、ジュリー・カーメン、ジョン・アダムス ほか