大ヒットによってスターとなった男が糟糠の妻や長年連れ添った恋人を捨て、別の女性と結婚してもスターの証、芸の肥やしと肯定された時代があった。しかし最近ではネット上で批難され、活動自粛や事実上の引退に追い込まれるケースもある。俳人で著作家の日野百草氏が約20年続いたミュージシャン男性と交際した女性の話から、時代の変化を考えた。
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「彼とのつき合いは20年です。数年前に捨てられて、20年の思い出だけが残りました」
西新宿のパスタ店、富田里未さん(40代、仮名)はその思い出をひと通り語ってくれた。彼女はあるミュージシャンと1990年代後半から2010年代の約20年間つき合った。もっとも、その彼は数年前に失踪した上に開店休業状態だったので元ミュージシャン、かもしれない。失踪中の期間も足したら20年以上ということになる。富田さんとは旧知だが、まさかそんなに長くつき合った男性がいたとは。
「友達に誘われたライブで知り合ったんです。まだ何もわからない田舎の短大生でした。東京までの電車賃がもったいない、なんて思うくらい」
東京まで在来線で2時間かけて友達とライブ、それもテレビで見かけないようなバンドとミュージシャン――アイドルや少女漫画が好きだった普通のティーンネイジャーだった富田さんにすれば興味はなかった。しかし仲のいい友達の誘いと、ちょっと大人の世界を覗きたい好奇心から付き添ったという。
「当夜のライブなんて初めてでしたし、大人になったみたいで楽しかった」
まさか20年もつき合い、時間も金も台無しにされるとは。
「頼んでもいないサインを渡されて、そこに電話番号が書いてあったんです」
私の売れ時ぜんぶ持ってかれちゃいました
20年のつき合いで捨てられた。とてつもなく深刻な話であることは筆者も事前に聞いている。踏ん切りはついているというのか。
「ついていません。私の売れ時ぜんぶ持ってかれちゃいましたから」
不倫で10年とか、某出版社にそんな女性もいたが筆者の知る限り20年は最長、あまりに酷い。彼は10歳上でもうアラサーだったという。だから生きているならもう50代、ということになる。
「難しい音楽論とかも話せて、大人で落ち着いてる感じがしたんですが、実際は最低な男でした。女と金にだらしなくて、私とつき合ってる間も何股かけられたかわからない」