9月3日に日本で公開されてからわずか3日で興行収入3億113万円、動員人数は19万人となる勢いで話題となったマーベル最新作『シャン・チー テン・リングスの伝説』。マーベル史上初のアジア系ヒーローを主役にしたこの作品は、公式ホームページでも「マーベル・スタジオの新時代を担う」と華々しく紹介される。主演を務めるのは中国系カナダ人のシム・リウだ。これはさぞや中国のマーベルコミックファンも盛り上がるのではと思いきや、中国での上映そのものが怪しくなっているという。
主演のシム・リウが2017年にカナダ公共放送CBCのインタビューで中国について、「多くの国民が飢餓に苦しむ開発途上国」と発言していたことが発覚したからだ。
中国での上映の可能性について映画評論家の前田有一氏がこう話す。
「厳しいでしょうね。シム・リウの中国批判発言が問題視されているだけではなく、今の中国当局は国内経済のバブルを意図的にクールダウンさせて格差是正を図るべく、エンタメ業界などで富を築いているスターや企業に対して、見せしめ的に脱税の摘発や規制の強化を進めている。そうした流れはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)にとっても逆風だと考えられるでしょう。『シャン・チー』だけではなく、監督による中国批判が指摘された『エターナルズ』の公開も危ぶまれています」
作中での“中国文化”の描かれ方も議論の対象になっているという。
「デスティン・ダニエル・クレットン監督は過去のインタビューで『欧米人の考える類型的な中国をあまり描かないようにした』と語っていましたが、作品を観るとアクションや美術、衣装などがいかにも“アメリカ人の考える中国人”という印象が拭えません。
中国で製作される映画はとっくにもっとスタイリッシュになっているし、俳優も洗練されています。その点、『シャン・チー』はひと昔前の中国武侠風です。主人公は武術がやたら強く、いまだにどこかの寺に集まって上半身裸になり、棒で叩かれて鍛えている『少林寺』の世界観。中国で上映したら“プチ炎上”すると思いますよ」(前田氏)