セ・リーグの新人王争いは大混戦の様相だ。開幕から独走するチームを引っ張っていた阪神の佐藤輝明(22)が、後半戦になって急ブレーキ。三振の山を築いて一時、二軍落ちとなった。
「今年は新人の当たり年。同じ阪神ではショートのポジションを奪って2番打者に定着した中野拓夢(25)が23盗塁でリーグトップ(9月22日終了時点、以下同)。投手でも先発ローテの一角を担う伊藤将司(25)がいる。佐藤に話題が集中していたが、24セーブで防御率0.45の広島・栗林良吏(25)、サイクル安打を達成して打率。280、本塁打18本のDeNA・牧秀悟(23)もルーキーとしては立派すぎる数字だ」(スポーツ紙デスク)
新人王はプロ野球担当5年以上の新聞、テレビ、通信社の所属記者の投票で選ばれる。そのため、単に成績だけでは決まらないという声もある。
「記事作りに貢献してもらった選手に票が流れる“印象点”の要素があるし、チーム成績の影響も大きい。佐藤の急ブレーキは痛い。ただ、阪神は番記者が多いので、佐藤が復調しなくてもチームが優勝すれば、中野、伊藤にチャンスがある。栗林の22試合連続無失点は凄いが、チームが最下位なのがどう評価されるか」(同前)
1971年に新人王を獲得した元巨人・関本四十四氏は、「一軍に戻ってきても佐藤が三振するたびに記者の票は別の選手に流れる」と評す。関本氏は入団4年目に新人王を獲得した経歴の持ち主。
「僕の時代は一軍で試合に出ていなければ何年目でも資格があったからね(現在は支配下登録5年以内などが条件)。新人王を争った若松勉さん(ヤクルト)は1年目から打率.303を記録したが規定打席にわずかに届かなかった。4年目の僕が選ばれたのは巨人のV7 に貢献したという要素があったでしょう。チーム成績も関係してくる」
その関本氏は今季について、「栗林も牧も1年目としていい成績だが、超ダークホースはヤクルトの2年目・奥川恭伸(20)」だとする。昨季は一軍登板2イニングのみだったが、今季はここまで7勝3敗の数字を残し、「ヤクルト優勝なら大逆転で新人王がある」(関本氏)というのである。
佐藤の失速、上位チームの混戦が重なった結果、“入団2年目の新人王”の芽が出てきた。
※週刊ポスト2021年10月8日号