9月下旬の週末の午後、子連れの家族や若いカップルで賑わう都内の総合スーパーに大物官僚の姿があった。今年7月に財務省事務方トップの事務次官に就任した矢野康治氏である。
矢野氏といえば、東大出身者が要職を占める財務省で、戦後初となる一橋大学出身の次官として注目を集める。
「かつて3年間、官房長官時代の菅(義偉)さんに秘書官として仕えたことから今の官邸の信頼は厚い。その一方で菅さん相手でも間違っていると思えば臆せず反論する頑固さがあり、いまや官邸の顔色を窺うばかりの財務省にあって“異色官僚”と言われています。今は持論である『財政再建』に向けて熱意を燃やしています」(全国紙政治部記者)
そんな矢野氏のオフの買い物風景を、本誌・週刊ポストは目撃した。
スーパーでアイスや納豆のパック、飲み物などを購入。会計を済ませると、商品一品一品を持参したリュックにしまっていく。アイスはレジ横にある無料のロール式ポリ袋で包み、持参した保冷バッグに入れる念の入れようだ。
すると、何やらキョロキョロし周囲を窺う矢野氏。隣の台で商品を詰めていた人が立ち去った瞬間、再びロール式ポリ袋に手を伸ばした。
ガラガラガラ……5回転ほどロールを回してポリ袋を巻き取ると、ササッとリュックにしまい込み、足早に去っていった。
昨年7月のレジ袋有料化以降、無料のポリ袋を大量に持ち帰る人たちが増え、「ポリ袋ハンター」と呼ばれて問題視されている。
この店のポリ袋のロールにも〈こちらのビニール袋の購入した商品を入れる以外のお持ち帰りはご遠慮ください〉という貼り紙があった。
このスーパーのレジ袋はMサイズが3円。エコの意識か財政への厳格さか、それを買わずに済ませたところまではよかったが、その後の矢野氏の行動はまるで「ポリ袋ハンター」そのものではないか……。
後日、帰宅した矢野氏に話を聞くと、「(リュックに入れたのは)5枚くらいです。(商品は)買ってますから、ちゃんと」と答えた後、怒った様子で「失礼でしょ!」と声を張り上げ自宅に入っていった。
プライベートでも“異色”ぶりが際立った。
※週刊ポスト2021年10月8日号