1971年に放送が始まった『仮面ライダー』は、藤岡弘(現・弘、)の負傷により、急遽、仮面ライダー2号として一文字隼人(佐々木剛)が登場する。その2号ライダー編から、作品の雰囲気は一気に華やかになった。
それまで仮面ライダー1号を助けてきたFBI捜査官の滝和也、立花藤兵衛のほかに、血気盛んな女の子たちがショッカーとの戦いに加わったからだ。中でも、紅白出場歌手として人気を集めていた山本リンダの参加は「仮面ライダー」の世界を、よりエンターテインメントへと導いた。当時の思い出を語ってもらった。
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レコード会社の移籍にともない、音楽の活動が制限されていた時期に、仮面ライダーに出ませんか、とオファーが来たんです。
すぐに承諾しました。私ね、昔から好奇心が強くて、何事にも挑戦することが大切だと思っているの。子供番組だとか、そんなことは気にしないで、私にできることなのであれば、とお引き受けしたんです。それに、実は私、子供の頃、お転婆だったんです(笑)。アクションシーンもあるといわれ、逆にもう、ドキドキワクワクしていたくらい。
私が演じたのはマリという女の子でフェンシングが得意という設定。スタッフは私にアクションの経験がないから、剣でも持たせておけば、蹴ったり投げたりしなくてもそれなりに格好がつくのでは、と思ったんじゃないのかな(笑)。もちろん、撮影が始まる前に、都内のフェンシングクラブに通い、突き方など一通りの動作は習ったのよ。
海や山のロケが多かったんだけれど、とっても楽しくって。撮影の合間は、ほかの女の子たちと大騒ぎ。まるで修学旅行でした。
この2枚の写真は大阪城近くの野原でのロケ。いつものように、みんなで撮影の合間に四つ葉のクローバー探しや首飾りを作ったりして遊んでいたんですけど、いきなり大きなムカデが出てきてワーキャーって(笑)。その後、十字架に縛られるシーンを撮影したのですが、いつムカデがニョロニョロ下から這い上がってくるか怖くて怖くて。“仮面ライダー、早く私たちを助けて!”と演技を忘れて真剣に願っていましたね。
そうそう、ムカデに対する私たちの怖がり方をスタッフの方が覚えていたのか、のちにムカデラスという怪人が現われたときは、みんなで笑っちゃいました。
半年後、そんな楽しい現場を離れて、私は本格的な音楽活動を再開することになりました。
おかげさまで『どうにもとまらない』がヒットし、新聞や雑誌が“『こまっちゃうナ』の山本リンダが『どうにもとまらない』で変身した”と書いてくださったの。「変身」の言葉に仮面ライダーが背中を押してくれているような気がして、心強かったのを憶えています。
【プロフィール】
山本リンダ(やまもと・りんだ)/1966年『こまっちゃうナ』で歌手デビュー。その後、多くのヒット曲を歌い、日本レコード大賞特別賞など多数受賞。
※週刊ポスト2021年10月8日号