中国政府が今年7月に出した事実上の「宿題、学習塾禁止令」が波紋を呼んでいる。小中学生を対象に、小学校1~2年生に対しては宿題を禁止、他の学年でも宿題の量を厳しく制限するほか、学習塾も新規開設および営利目的の活動は禁止、非営利団体としてのボランティア活動しか認めないなどという厳しいものだ。
しかし、中国では「上に政策があれば、下に対策がある」といわれるように、塾講師が小学生の自宅を訪問し、勉強を教えるなどの「違法」な運営をしていた塾が摘発されるなど、政府と学習塾側の「いたちごっこ」が続いている。中国メディアなどが伝えている。
中国政府は7月24日、「小中学生の宿題を軽減し、学外教育の負担を軽減する」という「双減」方針を発表。小中学校が児童・生徒に課す宿題を細かく制限すると同時に、小中学生向け学習塾の新設は認めず、既存の学習塾は非営利団体として登記させると通告。学校の宿題はともかく、学習塾は存在そのものが否定される形となった。
しかし、最近、北京市政府は「違法な運営をしていた63の学習塾を閉鎖させ、計311万元(約5293万円)の罰金を命じた」と発表。「彼らは自分たちのサービスを『コンサルティング』、『家庭科』、『住み込みの教師』などと称して放課後の家庭教師を提供しており、今後も無免許の組織や個人を一掃する」と通達した。
さらに、中国教育省は「放課後の家庭教師は、監督の目を避けるために地下に潜っているところもあり、それが政策の実施に影響を与え、悪影響を及ぼしている。これらの行為を断固として調査し、処罰するよう、すべての地域で指導する必要がある」と指摘している。
中国紙「南方都市報」によると、現役の教師や家庭教師が「栄養士」、「ジムの先生」、「保育士」などと称して、生徒の自宅に出入りし、勉強を教えているという。同紙は「受験競争の激化で急成長した学習塾業界では1000万人もの人たちが働いていたが、中国政府の弾圧とも言える政策で壊滅的な打撃を被っている。学習塾業界では8月末までに16万社が倒産した」と政府の方針を批判的に伝えている。
ネット上では「学習塾を禁止するのならば、テストもなくすべきで、高校や大学の入試もなくすべきだ。厳しい入学試験を抜本的に見直さないで、学習塾ばかりを責めるのは一方的に過ぎる」などとの声が出ている。