コロナ禍で大きな話題となったホテルの長期滞在プラン。テレワークの定着や旅行の自粛といった特殊要因も相まって、どこのホテルも発売後即完売という盛況ぶりだが、そのブームは今なお続いているという。「ホテルに住む」需要はどこまで広がるのか──。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が最新事情をレポートする。
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コロナ禍のホテルニュースの中でも大きなトピックだったのが、「帝国ホテル東京」のサービスアパートメントだ。テレワーク、デイユースのようなフレックス的な短時間利用とは真逆で、ホテルの客室を“住まう”ように長期滞在で利用してもらおうという発想だ。
サービスアパートメントについては、数年前からホテルライクなサービスを提供する施設として、外資系を中心に国内でも見られるようになっていた。最近では人気ビジネスホテルブランドのレジデンスタイプ施設もある。
ホテルが長期滞在プランを打ち出すメリット
帝国ホテルのケースでは「30泊36万円~」という料金も注目された。1泊にすると1万2000円とリーズナブルだが、その金額や内容もさることながら、あの伝統と格式ある帝国ホテルがサービスアパートメントをスタートすること自体に注目が集まった。そして、帝国ホテルに続き高級ホテルも続々と“長期滞在プラン”を発売し、即完売するなど人気を博した。
最近でも「365日で500万円」と究極ともいえるプランを打ち出すホテルのニュースが飛び込んできた。セルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)で10月1日から発売された長期宿泊プラン「ロングステイ365days」だ。アクティブシニア層に向けたホテル暮らしを提案しており、1年間にわたる長期宿泊プラン(2名まで)で一括払いならば500万円だという。
とある長期滞在型ホテルの支配人によると、「一般的な宿泊の場合には、客室清掃のコスト等の変動費が室料の2~30パーセントかかる場合もあるが、長期滞在であれば数日に一度の清掃で済むのでかなりローコスト」と話す。
客室にキッチンや電子レンジなどを備えるサービスアパートメントやマンスリープランは、潜在的な需用が見込めることに加え、ブランドイメージの向上や遊休スペース活用、省人化をはじめとしたコスト削減等もできるとあって、ホテル側にとっても長期滞在プランを打ち出すメリットは大きいというわけだ。
長期滞在型ホテルを利用する層としては、これまでは例えば地方に本拠を置く会社が東京の滞在型ホテルを手配し、一定期間社員を住まわせるという利用のされ方が多かった。他方、コロナ禍においてはワーキングスペース・エリア、生活の本拠も含め従来の常識が通用しない中にあって、改めてホテル・長期滞在・暮らすという潜在的な需要が露わになった。
ラグジュアリータイプであれば、前述のようなアクティブシニア層、若年であっても富裕層といった人々も想定しており、リーズナブルなタイプとしては、賃貸住宅の契約といったハードルもなく、そもそも定住場所を持たず自由にアドレスを変更できることに魅力を感じる人々に利用されるケースも見られると関係者はいう。
いずれにしてもこれまでの一般的なホテル利用と比較して、かなり安価に利用できることが魅力であることは間違いないだろう。