「気合と情熱に感激、号泣」「音と歌の圧がすごい!」──“こけら落としを観ると寿命が延びる”という言葉がある。9月26日、東京・有明にオープンした有明四季劇場でのミュージカル『ライオンキング』を観劇した人たちもまた、興奮冷めやらぬ様子だ。
この日、日本公演通算1万3084回を数えた本作。1998年より東京では浜松町、大井町と場所を変えながら、上演期間は22年を超え、国内総観客動員数は1290万人以上という、ミュージカルの“王者”として君臨し続けている。
同作はライオン・シンバの成長物語。そこに生命の尊さや親子の絆という普遍的で壮大なテーマが加わり、老若男女誰もが共感し、何度観ても感動できる圧巻のスケールだ。
魅力はそれだけではない。登場する動物たちは、衣裳やパペットで見事に再現され、舞台上をいきいきと飛び回る。さらに、「サークル・オブ・ライフ」「ハクナ・マタタ」など、劇中の楽曲は世界的に活躍するエルトン・ジョンが手がけ、ハイレベルな歌唱力とパーカッションの生演奏で届けられる。『女性セブン』は、稽古期間中の劇団四季に密着。“再生”を果たした本作の舞台裏に迫る!
本作の敵役「スカー」は、主人公シンバの叔父で、プライドランドを統べる王・ムファサの弟だ。王になれなかった恨みやコンプレックスを抱き、愛と権力に飢えたスカーの複雑なキャラクターを表現するのにも、マスクが一役買っている。2017年からスカーを演じる飯村和也によると、操作は驚くほど難しいそうだ。
「スカー役の俳優は、右手のリモコンでマスクを操作しながら演じます。マスクそのものはF1のボディーに使用するカーボングラファイト製で、非常に軽い。ですが、衣裳の下のバッテリーや牛革製のパンツなども加えると、その重さは20kg以上。スカーはプライドランドでいちばんの重装備(笑い)。出演している間は、毎日2〜3kmほど走り込みをして足腰を鍛えています」(飯村・以下同)
飯村は、2008年から同作でシンバを演じた経験も持つ。
「シンバもスカーも、常にマスクを通して演じます。俳優自身だけでなく、マスクの目線も相手の目線に合わせて、見つめたり、にらんだり、会話しなければならない。スカーのマスクは操作が難しい分、繊細な演技ができるので、大変な半面、とてもやりがいがあります。
見せ場は、スカーが自らの理想と現実のはざまで苦しむ『スカーの狂気』というナンバー。ジェットコースターのように乱高下する情動を、歌とせりふ、全身とマスクの動きで激しく表現しています」
一方、パペットは、本国アメリカの演出家が日本の人形浄瑠璃を学び、そこからヒントを得たという。色や顔つきなど見た目は世界共通だが、材料や構造は劇団四季の小道具担当者が日々工夫と改良を重ねて進化させている。そんなことを頭に置くと、観劇がいっそう楽しくなりそう。ぜひ劇場で目の当たりにしてほしい。
※女性セブン2021年10月14日号