昨年まで2年連続最下位と低迷していたヤクルトが、9月中旬から怒濤の9連勝を記録するなど6年ぶりの優勝に向けて猛チャージをかけている。
その快進撃のなかで、今夏「侍ジャパン」に選出され、東京五輪の金メダリストになった山田哲人(29)に異変が見られる。
「バッティングは例年通りの成績ですが、盗塁が極端に少ない。まだ4盗塁(9月29日時点)で、失敗も2つ。初盗塁も開幕から1か月以上経った5月12日でした。山田は2019年に33盗塁して、節目の200盗塁まであと32と迫りましたが2年経っても到達していません」(スポーツ紙デスク)
山田といえば「走・攻・守」三拍子揃った“ミスタースワローズ”。3割、30本、30盗塁の「トリプルスリー」を3度も達成し、史上初の「HR王」と「盗塁王」の同時獲得者(2015年)でもある。昨年オフに球団と「推定7年40億円」という大型契約を結び、今季からキャプテンに就任している。
走塁面では高い成功率を残すなど技術も高く評価されてきた。一体、山田に何が起こったのか。ヤクルトOBで、1992年の盗塁王でもある野球評論家・飯田哲也氏が言う。
「直接本人から聞いたわけではありませんが、昨年から続くコンディション不良で脚を故障したようです。脚は年々衰えます。特に体調が悪いと走り込めず、走らなければどんどん衰える悪循環に陥ってしまう。山田も十分に走り込めていないのでしょう。それに年齢の問題もある。僕も30歳を超えたあたりでスピードが落ちてきました」
また飯田氏は、山田は「役割を切り替えたのではないか」と指摘する。
「そもそも盗塁の企図自体が減っており、“意欲”が低下していると感じます。盗塁は1回でもアウトになると“もう次はダメかな”と思ってしまう。実はこの心理的影響が一番大きい。彼は大きいのが打てるので、無闇に走るのではなくバットでチームに貢献しようと考えているのでしょう」
今季のヤクルトは1番に定着した塩見泰隆(28)が20盗塁を記録し、後ろを打つ4番に若き主砲・村上宗隆(21)が控えている。“自分の記録”より“自分の役割”を優先し、キャプテンはチームの勝利を目指している。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号