放映権料の高騰も影響してか、今回のサッカーW杯アジア最終予選のアウェイ戦は地上波での放送がなく、有料放送のDAZNで配信されるだけになっている。つまり、日本代表戦で「おい!」「いいボールだ!」で視聴者を釘付けにし、「ふざけたロスタイムですね」「なんなんすか、これ」などの名言で心を鷲掴みにしてきた松木安太郎氏の解説が聞けない。アウェイでこそ本領を発揮する彼の絶叫が日本に響き渡らないことに、一抹の寂しさを感じる人々もいるだろう。
そんな中、松木氏は1対0と辛勝した9月7日の中国戦では、YouTubeのセルジオ越後チャンネル『蹴球越後屋』にゲスト出演。DAZNの映像を見ながら(※放映権の関係上YouTubeには映らず)解説した。かつて地上波で幾度となくコンビを組んだ2人は、一風変わった放送をしていたという。再び2人がYouTubeで解説するサウジアラビア戦を前に、松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が、中国戦の“松木&セルジオ解説”をリポートする。
(※試合の時間表記は『蹴球越後屋』に置かれた時計を基準にする。2人発言については、「まあ」「ちょっと」「これ」「もう」などの言葉、同じ内容を連続で反復している場合は読みづらさを避けるために省略している箇所あり)
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「ゴールちょっとズラしたいよね。ほんのちょっとでいいんだ」(2013年11月16日・オランダ戦)
かつて松木氏は本田圭佑のシュートがバーに当たるのを見て、こう呟いていた。だが、中国戦で前半22分に日本が惜しい攻撃をすると、これを上回る発言をセルジオ氏がし始めた。
セルジオ氏:今、柔道だったら技ありで。
松木氏:0.5点? セルジオさん、でもあれですよ。僕よりも10何年も長くサッカーやってんだから、柔道の…ルールとは違う…。
セルジオ氏:もしあればね。
松木氏:あればね。まさか柔道が出てくるとは思わなかったな。
両チームのポゼッションデータがDAZNの画面に映った直後の前半25分には、こんな会話が生まれる。
セルジオ氏:よく「ボール支配した。70%。1-0で負けた」。意味ないよな。
松木氏:今、ポゼッションの多いほうが負けてるシーンって多いから、ポゼッションのデータだけ追ってもしょうがないよね。
セルジオ氏:ボール触る回数で勝負決まったら面白いかもしれない。
松木氏:それはもう、柔道系でしょう。ねえ。柔道でしょう。ポストとバーに当たったら?
セルジオ氏:技あり。
松木氏:技あり。
セルジオ氏:今日は一本勝ちしたいなあ。
松木氏:一本勝ちしたいねえ。
この柔道話に松木氏のトーク力の高さが窺える。最初は「まさか柔道が出てくるとは思わなかったな」とセルジオ氏の発想に驚きを隠せなかったが、2回目には「ポストとバーに当たったら?」と自ら振っている。決して人のギャグを否定することなく、相手を乗せて場を盛り上げているのだ。
前半は柔道やゴルフでサッカーを例えていたセルジオ氏だが、後半になると中国の監督の話題を頻繁に出し始める。前半のアディショナルタイムには既にこう話していた。
セルジオ氏:中国、何が怖いかっていうのは、後半交代してくるのよ、監督を。
松木氏:後半ね、後半ってことね。このゲームの後半じゃないでしょ?
セルジオ氏:それが一番怖い。
松木氏:この全部(W杯最終予選)の後半ってことですからね、皆さんね。