近年のやくざ映画の特徴は?(イメージ)
いつの時代もやくざ映画は観るものを高ぶらせる。義理と人情の世界に生きる男たちは、いかに描かれてきたのか。
鶴田浩二主演の『人生劇場 飛車角』(1963年)から始まった任侠映画、深作欣二監督の『仁義なき戦い』(1973年)を皮切りにブームとなった実録路線で、やくざ映画は隆盛を誇り、1980年代には岩下志麻主演の『極道の妻たち』が人気シリーズになった。
しかし、1992年に暴力団対策法が施行され、やくざの社会的立場は弱体化する。2011年に暴力団排除条例が全都道府県に行き渡ると、銀行口座の開設や住居の賃貸、携帯電話の契約、保険の加入などが不可能になった。
時代の移ろいは映画作品にも影響し、今年公開の『ヤクザと家族 The Family』は“社会的弱者”となったやくざの悲哀を描いた。日々の生活に困窮し、堅気になっても「元やくざ」と知られた途端に仕事がなくなり、家族も離れていく。
いまや、やくざ映画の主人公は義理人情を重んじるヒーローから遠く離れた存在として描かれ始めている。2010年代以降の代表作を紹介しよう。
■変わりゆく境遇に戸惑うやくざのリアルな日常
『ヤクザと家族 The Family』2021年公開
1999年、2005年、2019年と3つの時代を描くなかで、やくざの社会的境遇の変化を克明に活写。柴咲組の山本賢治(綾野剛)は足を洗ってカタギになるが、元やくざであることが妻の職場に知れ、愛する家族を失う。
■社会復帰が思うにまかせない元やくざのやるせない後ろ姿
『すばらしき世界』2021年公開
殺人犯として2013年の刑期を終えた三上正夫(役所広司)は自立を目指すも、一度レールを外れた人間に社会の風は冷たい。七転八倒する彼にテレビマンがネタにしようと近づいてくる。
■常識はずれの刑事が挑むやくざ組織との終わりなき闘い
『孤狼の血』2018年公開
暴力団対策法成立直前、昭和63年の広島で暴力団の抗争を取り締まる刑事を描く。刑事の大上章吾(役所広司)は暴力団と癒着しているように見せかけながら、やくざ組織の壊滅を目指す。公開中の『孤狼の血 LEVEL2』も話題。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号