日本最高齢の女性映画監督・山田火砂子さん(写真/共同通信社)
「みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります。」──女流作家・佐藤愛子さんが、新著『九十八才。戦いやまず日は暮れず』でヘトヘトになる“戦いの日々”に終止符を打った──。11月に98歳を迎える佐藤さんが断筆宣言をした一方で、89歳にしてなお現役、日本最高齢の女性映画監督・山田火砂子さんは “生涯現役”への意欲を口にする。
「引き際なんて考えません。撮影しながら現場で死んじゃうのが幸せだと思います。そもそも私はずっとプロデューサーをやっていて、監督だった夫が亡くなってから、70代で監督を始めた。だから“撮りたい”という気持ちが途絶えないんです。
あと3か月で90歳。いつも映画を撮る時は『これが最後だろうな』と思って始めるんだけど、その作品が終わると『もう1本いけるかな』と思ってしまう。来年公開の作品『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』も、最後だろうと思って始めたけれど、撮影が終わって仕上げをしながら、もう次のことを考えています(笑)」
泳ぎ続けるマグロのように
佐藤さんが繰り返し綴ったような、“ヘトヘト”を感じることはないのだろうか。山田さんはこう言う。
「もちろん衰えはあります。とくに足ですね。60代で膝を悪くし、人工関節を入れたのがいけなかった。『20年はもちます。それを超えたら再手術』と言われ、『その頃には死ぬからいいか』と思っていたら、あっという間に20年経っちゃった。腎臓が悪いから再手術もできず、いまは足がふらふら。撮影は車椅子を押してもらってやっています」
それでも「とにかく撮りたい」という気持ちが絶えることがないという山田さん。
「ファンとして、佐藤先生がおやめになるのは本当に寂しい。『百歳の毒舌』みたいな本も読みたいから、ずっと書き続けてほしいんです。〝絶対やめないで〟って伝えたい」
そう“断筆撤回”をリクエストした。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号