中国四川省の甘孜州蔵(カンゼ・チベット)族自治州稲城で、13万年前のものとみられる旧石器時代の遺跡が発見。今年4月から5カ月間かけて調査したところ、考古学者らが1万点近くの石器の出土品を発掘した。地下の7つの層から6000点以上、地表で3000点以上の出土品を収集したことが明らかになった。
これらのなかには、アフリカ、ヨーロッパ、西アジアを中心に広がる前期旧石器時代の文化の総称である「アシュール文化」の典型的な石器である手斧や握鎚(にぎりづち)、握斧(あくふ)も発見された。これらの「万能石器」と呼ばれる手斧などは、これまで東洋では見つかっていなかったことから、「東洋の早期人類文化は西洋より遅れていた」という学説が流布していたが、今回の四川省での発見で、「この学説は完全に否定されることになった」と中国の考古学者は指摘している。中国共産党機関紙「人民日報」などが報じた。
この遺跡は稲城皮洛遺跡と呼ばれ、標高3750メートルの青蔵高原(チベット高原)東部に位置し、全体で約100万平方メートルという広大なもの。
遺跡を発見した四川省文物考古研究院旧石器研究室の鄭喆軒室長は「高原で100万平方メートル規模の旧石器時代の遺跡が見つかるとは非常に不思議なことだ。遺跡の発掘後、考古学従事者は1万点近くの石製品を発見しており、これは太古の人類の活動が非常に活発で、文化的にも非常に高度な生活が営まれていたことを証明しており、従来の認識を覆す発見だ」とコメント。「これらの石器のうち、アシュール文化の代表的な石器である手斧は心を躍らせる発見だ」と指摘している。
アシュール文化とはアフリカ、西ヨーロッパ、西アジア、インドの旧石器時代早期文化であり、フランス・アミアンのサン・タシュール遺跡で最も早く見つかったことから、その名がつけられた。
中国旧石器考古専業委員会の高星会長は「今回の皮洛遺跡の発掘調査では世界で標高が最も高い場所で、アシュール文化に並ぶ遺物が出土した。手斧や薄刃斧などの石製品は、製造技術が最も精巧なもので、西洋の後期アシュール遺跡の出土品に匹敵する素晴らしい出土品だ」と述べている。