国民不在の自民党総裁選が終わり、約1か月後には総選挙が行なわれる。今度は国民が主役だ。総裁選には投票できなかった全国の有権者が「1票」を行使して政治に物言う番がやってくる。総選挙で投票したい候補がいないなら、有権者が「ためにならない」と考える政治家を懲らしめる方法がある。それが落選運動だ。一言で言えば、国民が候補者の素行や過去の言動をチェックしてその事実を他の有権者に広く知らせ、当選させないようにする。やり方は、ネットやSNSでもいい。
長老政治家たちの自民党支配は、彼らが率いる派閥の「数の力」に支えられている。
総裁選の決選投票では最大派閥・細田派を牛耳る安倍氏と、第2派閥・麻生派を率いる麻生氏が岸田氏を圧勝させ、キングメーカーとしての力を見せつけた。「落選運動」ではそうした派閥のボスに従う子分たちの行状もしっかりチェックしたい。
とくに前回総選挙(2017年)で次点との得票差が小さい選挙区の議員に対しては、落選運動の「怒りの1票」が効果的だ。
全国には、そんな「落選させやすい小選挙区」が多くある。本誌・週刊ポストは前回総選挙のデータから、自民党議員が当選した選挙区で、次点との得票差が小さい順に60の選挙区をリストアップした(別掲)。
60選挙区には、自民党が政権交代した2012年総選挙の初当選組、いわゆる“魔の3回生”の選挙区が21を占める。
安倍政権の高支持率という追い風に乗ってこれまで楽に当選を続けてきたことから、規律が緩く、不祥事議員が続出した世代だ。「安倍チルドレン」とも呼ばれ、派閥にかかわらず安倍シンパが多いのが特徴だが、「選挙の厳しさを知らない、地盤が弱い議員が多い」(自民党選対幹部)とされる。
この“魔の3回生”世代の当落は自民党の勝敗だけでなく、今後の安倍氏の党内発言力を左右するといっていい。
「公募」を隠れ蓑にした世襲
「自民苦戦」と見られている次の総選挙では大物政治家が相次いで引退し、世襲候補に世代交代する。
その象徴が菅義偉・首相側近として知られる自民党選対委員長・山口泰明氏(竹下派)の「埼玉10区」だ。山口氏は東京都議選(7月)で自民の事実上の敗北が決まると突然引退を表明して党内を驚かせた。選挙の指揮を執る選対委員長が総選挙前に引退表明とは前代未聞だが、党埼玉県連は候補者公募を行ない、選ばれたのはなんと山口氏の次男で秘書の晋氏。政権批判が強い中で自分が出馬しては不利と考えたのか、息子に地盤を譲ったわけである。
同様の世襲候補は、竹本直一・前科学技術相(岸田派)の「大阪15区」でも誕生した。8月27日に次期衆院選への不出馬を表明した竹本氏が、「適切な方法で彼を選んでもらえるなら、引き継ぎたい」と語った通りに、娘婿で元国土交通省官僚の加納陽之助氏が公募で選出された。ギリギリまで出馬する意向を示していた竹本氏だが、党の定年制で比例代表との重複立候補ができず、比例復活できない状況も“義理の息子”へのバトンタッチを後押ししたようだ。