ヤクザ映画には名作が多いが、ヤクザがヤクザ映画を見ても面白いのか──フリーライターの鈴木智彦氏が、現役やくざ100人にアンケートを実施。「好きか嫌いか」「観るか観ないか」を聞いた。
【Q1】「ヤクザ映画を好きか、嫌いか」
・好き 61人
・嫌い 27人
・どちらともいえない 12人
ヤクザたちに我が半生をインタビューすると、ヤクザ映画が渡世入りの原点だったと語る親分が少なくない。特に戦中派は政府がヤクザの滅私奉公を利用し、国家のために死にゆく兵隊を量産するため、ヤクザ映画が量産された時代を生きてきたので、「子供の頃に映画を観てヤクザに憧れた」と述懐する人がかなりいる。
加太こうじは『日本のヤクザ』で当時の世相をこう解説する。
「ヤクザ礼賛は日本軍隊礼賛に通じ、軍国主義の宣伝につながるものがあった。親分への絶対的な服従は天皇への服従に通じていた。これは明治以降、昭和に至るまで次第にその度合が強くなった。従って、太平洋戦争開始までの政府は民衆教化の策としてヤクザ者における掟──義理を尊重する講談や浪花節を奨励した」
かつてのヤクザ映画は文科省推薦のような位置にあったのだ。
団塊の世代もまた、大衆娯楽としてのヤクザ映画全盛期に育ったので、多感な時期にヤクザ映画から影響を受けている。約6割の現役が、ヤクザ映画を好きだと回答した。天敵である警察官に「刑事物の映画を観るか」質問したら、果たしてどうなるのか興味が湧く。
【Q2】好んでヤクザ映画を観るか、観ないか
・よく観る 5人
・たまに観る 35人
・気が向いたら観る 19人
・ほぼ観ない 41人
6割の現役が「ヤクザ映画が好き」と答えているのに、「よく観る」は5人しかおらず、「たまに観る」を含めても4割しかいない。好きと答えた割に、ヤクザはあまりヤクザ映画を観ていないのだ。
ただしこの質問には注釈がいる。当初は好きなヤクザ映画を訊くと、『ゴッドファーザー』のようなハリウッドのマフィア映画や、『男たちの挽歌』や『友へ チング』といったアジアの監督たちが撮った映画を挙げたヤクザが多かった。