10月11日に行われるプロ野球ドラフト会議。今年はコロナの影響もあり各球団とも指名選手の絞り込みに苦戦しているが、もっぱら「左腕に逸材が多い」と評判だ。中でもスポーツライターの大利実氏が注目しているのは、高校野球屈指の強豪が揃う神奈川の名門校同士で鎬を削ってきた“2人の左腕”の行方だ。
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今年のドラフト戦線は、山田龍聖(JR東日本)、隅田知一郎(西日本工業大)、佐藤隼輔(筑波大)、山下輝(法政大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)ら社会人・大学の逸材左腕が上位候補に挙がり、「高校生BIG3」と呼ばれる風間球打(明桜高)、小園健太(市和歌山高)、森木大智(高知高)を含め、1位指名12枠の大半が「左腕投手」で占められる可能性が高い。
名門校同士で意識し合う「ライバル左腕」
毎年コンスタントに上位指名を輩出する神奈川の高校からは、12名の選手がプロ志望届を提出した。
2013年の松井裕樹(桐光学園高/東北楽天)以降、2015年の小笠原慎之介(東海大相模高/中日)、2016年の藤平尚真(横浜高/東北楽天)、2019年の森敬斗(桐蔭学園高/横浜DeNA)と、1位指名が4人生まれているが、今年も楽しみな選手が多い。
実績で言えば、今春センバツで29回1/3を無失点に抑えて優勝投手に輝いた左腕・石田隼都(東海大相模高)がナンバー1。ストレートの平均球速は130km台後半だが、腕を振って投じるスライダー、チェンジアップとのコンビネーションに長け、総合力に優れる。183cm・75kgの華奢な体がプロ仕様に成長すれば、先発ローテで活躍できる可能性を秘める。
ポテンシャルで見れば、最速148kmを誇る速球派左腕・金井慎之介(横浜高)も負けていない。183cm・78kgと、石田と似たような体格だ。高2春の時点で、1学年上の松本隆之介(横浜DeNA)を視察したスカウトが、「今年のドラフトでも指名される素材。ストレートのキレが抜群」と興奮気味に話していたことがあった。その後、左ヒジのケガで苦しんだが、3年夏に向けて少しずつ状態を戻してきた。進学を勧める声もあるなか、自らの意思でプロ志望届を提出した。
栃木出身の石田が、「神奈川で高校野球をやると決めてから、『横浜に勝って甲子園』をずっと思い描いていた」と話せば、金井は「どんなゲームでも動じずに投げる、石田くんの気持ちの強さを見習いたい」と同じ左腕として強く意識する存在だった。