総務省が発表した、60代における1日のインターネット使用時間の平均は105分。この数字は過去最長といわれており、巣ごもり生活によってこれまでスマホやパソコンと縁がなかった人も映画を見たりテレワークに使ったりと、モニターを見つめる機会が増えたことが理由とされている。
それに伴ってモニターから発せられるブルーライトをカットし、目を守るという名目のブルーライトカット眼鏡の人気も加速している。現に、ある眼鏡チェーン店では同機能を持つレンズの合計販売数が前年同週比で500%になったと発表した。
だが、その実効性に疑義を唱える専門家は少なくない。日本眼科医会常任理事の加藤圭一さんが指摘する。
「実は、ブルーライトカットが疲れ目を軽減するという学説に、医学的なエビデンスは確立していないのです。そもそも液晶画面から発せられるブルーライトは窓越しの太陽光よりずっと少なく、網膜に障害を起こすことのないレベル。それどころか小児の場合、ブルーライトカット眼鏡の装用はブルーライトにさらされること自体よりも有害である可能性が否定できません」
例えば、ブルーライトカット眼鏡によって太陽光が遮断されると近視のリスクが上がるなどのケースが指摘されている。現状を懸念した同会は2021年4月にこれらの問題点をまとめた「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」を6団体共同で発表。アメリカの権威ある眼科医らの団体「米国眼科アカデミー」もブルーライトが目に悪いという科学的根拠はなく、ブルーライトカット眼鏡を推奨しないと訴えている。
「ブルーライトカット眼鏡を使うと目が疲れないというのは、民間療法レベルの根拠に乏しい話です。今後、デジタル端末のさらなる普及が予想されますが、『ブルーライトカット眼鏡をかけているから』と長時間使い続けるのは目にとって大きな負担となります」(加藤さん)
※女性セブン2021年10月21日号