れいわ新選組代表で元参院議員の山本太郎氏が、10月8日夜の街頭演説で、次期衆院選は「東京8区」から出馬することを表明。波紋を広げている。同区で議席を持つ現職は自民党の石原伸晃元幹事長で、野党側は今回、立憲民主党の新人・吉田晴美氏を統一候補とする調整が進んでいた。そこに山本氏が「自分こそ野党統一候補」と乗り出してきた格好だ。
この東京8区は小選挙区制導入以降、石原氏が8回連続で当選してきたことから“石原王国”とも呼ばれるが、永田町関係者からは「それほど固い地盤があるとも思えないのに、自民党が勝ち続けられる“謎の選挙区”のひとつ」との声もある。
「杉並区のほとんどのエリアをカバーする東京8区だが、もともと革新リベラル層の多い地域とされ、中選挙区時代の杉並区を含む旧東京4区では、社会党や共産党の候補者がトップ当選したこともある。にもかかわらず、小選挙区制が導入されて以降の東京8区で石原氏が勝ち続けられたのは、野党側の戦略の問題という要素が大きい」(大手紙政治部記者)
2009年の総選挙では、自民党が歴史的な大惨敗を喫し、民主党政権が誕生した。この時は東京にある25選挙区のうち、自民党は4選挙区でしか議席を得られなかったが、そのうちのひとつが石原氏の東京8区だった。結果だけを見ると、逆風に負けない強い保守地盤があるように思えるが、自民党関係者は「そうではない」と語る。
「この年の総選挙ではとくに都市部で民主党の候補が地滑り的に勝利を収める“ドミノ現象”が起きた。そうしたなか、東京で自民党が勝てた選挙区のほとんどは、相手が民主党の候補ではなく、選挙協力を結んでいた社民党や国民新党の候補者だったところです。東京8区もそうで、石原氏の相手は社民党の保坂展人氏(現・世田谷区長)だった。民主党の候補が相手だったら結果は分からなかった。野党側の戦略との巡り合わせで、ずっと議席を守ってきたとみることができるわけです」
前回2017年の衆院選でも、東京8区では立憲民主党、希望の党、共産党、元民主党副代表の無所属候補など野党候補が乱立し、石原氏は得票率約39%ながら逃げ切って当選を果たした。立民と希望の候補者の得票数を合わせた数字は、石原氏のそれを大きく上回っていたことからも、決して「盤石の地盤」ではないことがよく分かる。