コロナ禍により苦境にあえぐ業界は多いなか、ついつい見過ごされがちだが、現在、日本では「独身女性の3人に1人」「シングルマザーの50%」「18歳未満の7人に1人」が貧困(※1)状態という。
【※1:ここでは、その国や地域社会の平均的な生活水準と比較して、所得が著しく低い状態、いわゆる「相対的貧困」のことを指す。具体的には世帯の所得が、その国の全世帯の所得の中央値の半分に満たない状態のこと。日本では122万円以下、4人世帯で約250万円以下(2015年時点)】
昨年7月、厚労省は「日本の相対的貧困率」を発表した。人口全体での貧困率は15.4%、全人口の6人に1人が貧困状態という衝撃的な数字だ。OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、日本の貧困率はG7(先進7か国)でワースト2位。なかでも貧困率が50%超のシングルマザーだけでなく、独身女性や18歳未満の子供の環境は悲惨である。
近年、特に深刻なのが女子大生の状況だ。『東京貧困女子。』(スペリオール・ダルパナ)の原作者で、貧困や介護などの社会問題に詳しいノンフィクションライター・中村淳彦氏が語る。
「学費高騰や親世代の収入減、親や祖父母の無理解など事情が重なって、一般女子学生が風俗や売春をする例が10年ほど前から見られる。風俗や水商売の現場は女子大生まみれです」
『東京貧困女子。』には生々しい現実が描かれている。「生活のため風俗嬢になった女子大生」、「パパ活で学費を稼ぐ夜間学生」……。
「恵まれた時代に育った親世代は環境の変化を知らないまま、子供に高額な学費や生活費の自己負担をさせている。払えない子供は勉強するために風俗や売春をする事態となる。今の日本は、親や公的機関が高校卒業まで大切に育てた子供を、大学生になった瞬間にカラダを売らせる異常な状況になっています」(中村氏)
彼女たちの貧困は、決して他人事ではない。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号