コロナ禍で、スマホを利用する人が増えているという。MMD研究所の調べによると、緊急事態宣言下でのスマホの利用時間は全体的に増加傾向にあり、最も増加率が高かったのは、なんと「7時間以上」の群。宣言前と比べて34%も増えており、その多くがSNSを利用している。
SNSでは上“炎上問題”というリスクもある。匿名で顔を合わせず、文字だけでやりとりするSNSは、感情や議論がエスカレートしやすい。ホワイトハンズ代表の坂爪真吾さんは、「怒り」にも、高い中毒性があると語る。
「一説では、自分の主張を“正義”として、人に怒りをぶつける際の快感は、性行為と同等だといわれます。その快楽に依存している人は、怒りの矛先を探して、SNS上に散らばっている他人の怒りに便乗し、炎上に加担します」(坂爪さん・以下同)
毎日のようにSNSで炎上騒ぎが起こるのは、利用者が本当に怒りを抱えているわけでも、問題意識が高いわけでもなかったというわけだ。
「いまや炎上は、スマホがあれば誰でも参加できる手軽な娯楽。特に、すべての人が当事者・被害者・加害者になり得るジェンダーの問題は、社会正義を振りかざしやすく、格好の火種です」
SNSでは「ツイフェミ」「クソオス」といった、異性を侮辱する呼称を目にすることが少なくない。「夫が手料理をつくってくれました」と言う人に「女のくせに家事をさぼるな」と、「妻の帰りが遅くて寂しい」と言う人に、「束縛モラハラ夫」となじる機会をうかがっている人がゴロゴロいる。もはや、誰が何を投稿しても炎上させられると言っても過言ではない。脳科学者の杉浦理砂さんはいう。
「他人を罰することで得られる快感は一時的なもの。一度ドーパミンによって快楽を得ると、すぐに次の刺激が欲しくなって“攻撃中毒”になります。SNSは匿名で攻撃できるので、実生活では抑えている攻撃的な部分が表に出やすく、言葉が過激になりやすい」(杉浦さん・以下同)
そうして、時には人を死に追いやるほどの誹謗中傷が書き込まれることさえあるのだ。だが、顔が見えないからといって汚い言葉を書き込むと、傷つくのは相手だけではないことは忘れないでおきたい。
「相手を罵倒してスッキリしたように感じていても、ネガティブな感情は消えません。“情動脳”と呼ばれる脳の扁桃体は、“理性脳”といわれる前頭前野よりも驚異的に早く反応するうえ、自分が発したネガティブな言葉を“誰が誰に言ったのか”は判断できません。そのため、攻撃的な言葉をアウトプットすると、自分が誹謗中傷を受けたのと同じくらい、脳はダメージを受けます」
SNS上では、高い地位にいる人や多くの収入を得ている人を「上級国民」と呼んで皮肉り、攻撃することがある。
「“上級国民”と呼ばれる人たちを攻撃対象にするのは、自分たちが持っていないお金と権利に対する嫉妬や憎しみ、怒りを発散するためです。しかし、こうした感情は、吐き出せば吐き出すほど、嫉妬や憎しみを抱くに至った過去の記憶がフラッシュバックし、苦しむことになります」(坂爪さん)
相手だけでなく、自分自身もおとしめる──「人を呪わば穴二つ」は、バーチャルの世界でも通用するようだ。
※女性セブン2021年10月21日号