スマホをすぐに手が届く場所で充電しないのも手(写真/Getty Images)
子供や孫の描いた絵、きれいに盛りつけた料理、新しい服、友人との会食……更新するたび、誰かが「いいね!」と言ってくれる。だが、SNSは、一度手を出せばズブズブと抜け出せなくなる“底なし沼”だ。
スマホ依存防止学会代表の磯村毅さんは、どんな人でも、SNSを始めたらハマってしまう可能性はあると語る。とはいえ、便利なツールであることは間違いないし、もうアカウントを持っている人なら、急にアカウントを削除したら、周囲からどう思われるか気が気ではないかもしれない。どうやって踏みとどまればいいのか。
「ひとまず一定期間、SNS断食をしてみてください。SNSやスマホに影響を受けた脳の血流や睡眠サイクルが元に戻るのに必要な3週間が目安です。周囲の人には、“3週間だけデジタルデトックスする”などと言えば問題ないでしょう。3週間かけて、あなたにとってSNSが本当に“世界一便利な道具”かどうか確かめて」(磯村さん)
すでに中毒になりかけているなら、たった3週間でも耐えられないかもしれない。それならせめて“チェーンSNS”だけは控えてみてほしい。おくむらメモリークリニックの奥村歩さんはいう。
「SNSは、画面をスクロールすれば永遠に次の投稿や広告が表示される。テレビや本と違って終わりがありません。次から次へとタイムラインを流し見するのは“情報メタボ”まっしぐら。コンビニ各社の人気スイーツベスト10を片っ端から食べるようなものです。本当に親しい人や本当に好きな人だけをフォローして、無意味な広告は非表示にするなど、タイムラインの整理を」(奥村さん)
脳科学者で早稲田大学理工学術院教授の枝川義邦さんによれば、こまめに“休憩”を挟むだけでも効果的だという。
「連続で2時間タイムラインを眺め続けるよりも、ちょこちょこ脳を休ませて、結果的に2時間SNSをする方が、脳に与える影響が小さいことがわかっています。スマホをポケットではなくかばんに入れたり、起動は顔認証ではなくパスワード入力にするなど、めんどうな手順を意図的に増やすことで認知負荷が高くなり、何も考えずにSNSを開くのを防ぐことにつながります」(枝川さん)
脳を興奮させないよう、画面をモノクロにするのも効果的だ。一方、ネット・ゲーム依存予防回復支援団体代表で臨床心理士の森山沙耶さんは、利用時間の見える化をすすめる。
「いまのスマホには、アプリごとの利用時間をチェックするスクリーンタイム機能があります。あとから見返すことで、SNSを利用している時間を把握できるので、長時間使っていることを自覚でき、心理的なブレーキがかかりやすい。現状を把握して、気合や根性ではなく、少しずつ利用時間を短くしていくのが現実的です」(森山さん)
奥村さんは、SNSをやめるなら「それまでSNSに費やしていた時間に何をするか」が最も重要だと話す。
「スマホから得られるのは視覚情報がほとんどで、味やにおいはありません。SNSを使わないと決めた時間は、スマホを置いて散歩に行ったり、掃除をしたり、料理をしたり、五感を使うように心がけて」(奥村さん)
SNSに居場所を求めるのは、実社会で満たされない気持ちを抱えているからだと、専門家は口をそろえる。だが、次々と贈られるいいねはすべて、「あなたの投稿」に向けられたもので、「あなた自身」への称賛ではないのだ。
「いいねをくれる人たちが、困ったときに助けてくれるとは限りません。フォロワーの多くはあなたのファンではなく、あなたの投稿を面白がっている、ただの傍観者なのです」(ホワイトハンズ代表・坂爪真吾さん)
自分の「フォロー一覧」を見ればわかるだろう。SNSでのつながりはとても希薄で、ドライで、恐ろしい。危険を知って時にはそこから逃げることが、回り回って役に立つはずだ。
※女性セブン2021年10月21日号