名門大の野球部が揺れている。広島の床田寛樹、野間峻祥らプロ野球選手を輩出している中部学院大の原克隆監督が10月から開催されている秋季リーグ戦直前に突然、解任された。同大野球部では昨年から3度のコロナクラスターが発生しており、それが解任の理由だという。大学側の説明はこうだ。
「3度のクラスターに対する監督責任です。これまでクラスターを出すたびに近隣から“なぜ練習させているんだ”といった厳しいご意見を多数いただき、3回目となった今回は過去2回と比べものにならない数のご意見があった。大学内部からも“実習先の病院や学校から生徒の受け入れが拒否される”といった批判があり、やむを得ず判断を下しました」(事務局長)
同大野球部でクラスターが初めて発生したのは昨年7月。部員10人の感染が発覚した。学校関係者が語る。
「大学や保健所の指導で感染症対策が徹底されました。寮の所有者である原監督主導のもと、寮での生活は厳しく行動制限され、食事は自室で食べるようになった。お風呂も入浴が禁止され、15分以内のシャワーに変わりました。寮生が100人近くいるため、最後の部員は深夜1時過ぎにシャワーを浴びています」
しかし、今年5月のリーグ戦最終戦前日に2回目、感染者27人に上るクラスターが発生、リーグ戦に優勝するも東海選手権の代表辞退に追い込まれた。さらに9月にも5人の感染が発覚し、原氏は解任に至った。
この経緯に、野球部員の保護者らは戸惑いを隠せない。
「野球部は徹底的な感染症対策をしていましたし、クラスターの原因も特定されていません。コロナに感染した部員の一人は原監督の解任を知らされるや、『僕のせいですか』と涙したそうです」
疑問の声は高まり、部員、保護者、OBらが処分撤回を求める署名運動を始めた。原氏と関係の深いプロ野球OBも賛同し、開始1週間ですでに署名は4000人を超えている。原氏がかつて率いた東北福祉大時代の教え子で署名運動に参加する星川学氏(元・ヤマハ野球部)はこう語る。
「学校側としこりを生んでほしくない。関係を修復した形で監督に戻ることを願っています」
職員として大学に残る原氏に聞くと、「選手がそれぞれの役割で活躍してくれることを願うばかりです。私の口からそれ以上お話しできることはありません」と一礼して去った。コロナは名門大学にも禍をもたらした。
※週刊ポスト2021年10月29日号