10月31日投開票と超短期決戦の総選挙は、いきなり終盤の様相だ。期待外れだった新内閣の支持率、自民候補同士の内紛、スキャンダル議員の尻ぬぐいなど、多くの“負の遺産”を抱えたまま、岸田文雄・新総理は“審判の日”を迎える。
本誌・週刊ポストは、選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏の協力を得て、解散直前の10月12日時点の野上氏の情勢分析から、各小選挙区と比例代表を合わせた全465議席の当落、各党獲得議席をシミュレーションした(別掲表参照)。
予測議席数は、自民党は小選挙区171議席、比例68議席で合計239議席。衆院での単独過半数(233議席)をなんとか維持できる水準だ(政党別獲得議席予測は別掲表参照)。
だが、自民党が政権を維持したとしても、大幅な議席減となれば、党内の権力バランスに大きな地殻変動が起きる可能性がある。
岸田政権は安倍晋三・前首相、麻生太郎・副総裁、甘利明・幹事長のいわゆる3A(トリプルA)が実権を持つ「傀儡政権」と呼ばれる。
3Aは先の自民党総裁選で岸田氏を総理・総裁に担ぎ上げ、新内閣の組閣や党役員人事にも影響力を発揮して今なお自民党内に隠然たる力を持っていることを見せつけた。
だが、総選挙後にその3A支配の構造が崩れそうだ。安倍氏が首相退陣後も強い発言力を行使できるのは党内に2つの権力基盤を持つからだ。
1つは安倍氏の出身派閥で最大派閥・細田派の「数の力」。もう1つは、いわゆる“安倍チルドレン”の存在だ。安倍氏が総理・総裁時代に総選挙で当選させた1~3回生議員127人の多くは、派閥を越えて安倍氏の影響が強いと見られている。
その2つの党内基盤を背景に安倍氏はキングメーカーとしての力を発揮してきたが、総選挙後は2つの基盤ともに弱体化が避けられそうにない。
まず“安倍チルドレン”はこれまで「追い風」で当選してきただけに選挙地盤が弱い議員が多い。野上氏の選挙区情勢分析によると、当選1~3回生127人の半数以上、69人が劣勢か、接戦(互角)の戦いを強いられている。大量に落選すれば安倍氏は政治基盤の1つを失う。
さらに各選挙区の情勢から自民党の5大派閥の議席増減を予測すると、96人の議員を抱える自民党最大派閥・細田派は大きく勢力を減らす可能性が高い。
細田派の衆院議員は61人(参院35人)だが、そのうち22人が選挙区で劣勢に立たされ、3人が接戦(互角)、合わせて25人が選挙区で落選の危機に立たされている。比例単独(名簿順位下位)で当選した4人も今回は当選が難しい。