TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』の初回放送(10月10日)が15.8%の高視聴率を叩き出し、ロケットスタートを切った。巨大災害をめぐって専門家の意見が対立し混乱をもたらすなど、現実社会にも通じるリアルな内容が話題を呼んでいる。
なかでも異彩を放つのが、仲村トオル演じる東山総理と対立する里城という政治家(石橋蓮司)の存在だ。
総理を屈服させる迫力と「副総理兼財務大臣」という肩書きが麻生太郎氏を彷彿させるとして、ネット上でも「副総理が麻生にみえた」「副総理兼財務大臣って、もう麻生さんそのまますぎておもしろい笑」といった声が上がっている。
ドラマは永田町でも話題になっていると、全国紙政治部記者が言う。
「劇中では、総理が主人公の小栗旬演じる環境省の官僚らに大規模な環境政策をまとめさせ閣議にかけるのですが、その場で多数派派閥を率いる副総理が『経済が停滞する』『総理を短命に終わらせたくない』と押さえ込む場面がある。永田町では『まるで麻生さんのようだ』といった感想が飛び交っています」
それどころか、ドラマの内容は期せずして現在の政局に結びついてしまっていると指摘するのは、自民党関係者だ。
「矢野康治・財務次官が月刊誌『文藝春秋』で、衆院選や自民党総裁選に絡む政策論争を『バラマキ合戦』と批判したことをめぐり政府内で足並みが乱れ、にわかに政局化しています。
岸田文雄・首相が『いったん方向が決まったら関係者はしっかりと協力してもらわなければならない』と釘を刺し、高市早苗・政調会長も『大変失礼だ』と不快感を示したのに対し、鈴木俊一・財務相は『前財務大臣だった麻生氏の了解を取ったもので、政府の基本方針に反するものではない』と擁護しました。麻生派の鈴木財務相の言葉は、麻生氏の代弁と見ていいでしょう。
論文は内容的にも麻生氏が唱える財政再建論そのもので、永田町では麻生氏の意向で書かせたものだと見られている。そうしたことから、『日本沈没』で副総理兼財務大臣が総理の政策を押さえ込もうとする構図が現実と重なって見えてしまうのです」
だからこそ、ドラマの今後の内容に、永田町は注目している。
「劇中で副総理兼財務大臣が悪役化していくと、世間的に麻生―矢野ラインの印象まで悪くなっていく可能性がある。高視聴率のドラマですからその影響は侮れない。自民党や政府関係者はドラマの先行きから目が離せないのです」(同前)
リアルを追及するドラマだからこそ、現実に影響を与えてしまうのかもしれない。