10月上旬、東京・歌舞伎町の新宿東宝ビル、通称“ゴジラビル”の通り沿いにトゲトゲがついた鳥よけシートが設置されていることがネット上で話題となった。周辺には以前から若者が日常的にたむろし、“トー横キッズ”と呼ばれて社会問題にも発展していた。それだけに、その対策のためと見る向きもあったようだ。実際のところ、なぜ鳥よけシートが設置されたのか。その経緯と目的を探った。
“トー横キッズ”とは、新宿東宝ビルの横に集まる10代を中心とした若者たちの俗称。2018年頃から歌舞伎町にたむろし始め、もともとは自ら“トー横界隈”と名乗っていたという。だが次第に人数が増え、低年齢化して12〜13歳の子供も参加するようになるとともに、誘拐や傷害などの事件も勃発。メディアでもたびたび取り上げられ物議を醸すようになっていった。
そんな中、“トー横キッズ”が集う新宿東宝ビル脇に鳥よけシートが設置され、SNS上では「トー横キッズ対策?」「効果あるんだろうか」とさまざまな意見が飛び交った。設置されているのは新宿東宝ビル東側の路地に面した植え込みだ。実際に現地に足を運んでみると、ちょうど大人の腰ほどの高さの場所に鳥よけシートがまばらに置かれてあった。
植え込みの縁は平らではなく内側に向けて急斜面となっており、もともと座りづらいデザインであるものの、腰掛けようと思えば休憩できる形状となっている。そこに鳥よけシートが設置されたのだから、座り込みを阻止することが暗に示されていると考えることはできる。ただし、鳥よけシートは簡易的なもので、動かそうと思えば動かすことができてしまう。
一体どのような目的で鳥よけシートが置かれたのだろうか。新宿区に問い合わせてみると下記のような回答があった。
「鳥よけシートの設置個所は民間の敷地内にあり、区が設置したものではありません。設置者や目的、設置時期、効果などについて、区では承知していません」(新宿区危機管理担当部)
区は設置に関与していないということだったため、歌舞伎町商店街振興組合に質問すると、「当組合、行政、企業にて協議した結果、ゴミ捨て防止と植栽保護のため、9月からビル所有者に設置を依頼しました」と回答があった。とはいえ、鳥よけシートを設置したところでゴミが捨てられなくなるわけではない。同組合も設置後の効果について「当組合としては特に変わった様子は見受けていません」と説明した。