作曲家のすぎやまこういちさんが9月30日、敗血症性ショックのため亡くなった(享年90)。「亜麻色の髪の乙女」や「ドラゴンクエストのテーマ」などの名曲で知られるすぎやまさんだが、元はフジテレビで音楽番組『ザ・ヒットパレード』などを手がける敏腕ディレクターだった。
都立武蔵丘高校の同級生で、『日本レコード大賞』などの番組を手がけた元TBSプロデューサーの砂田実氏が、当時の逸話を語る。
「すぎやまくんとは学生時代からの親友で、彼がフジテレビ、僕がTBSに入ってからも仲が良かった。彼が当時、まだそれほど有名でなかったクレージーキャッツを起用して『おとなの漫画』という番組をやるから、『砂田くん、台本書いてよ!』と頼まれてね。
ライバル会社なのに頼むほうも頼むほうだけど、受けるほうも受けるほうですよ(笑)。バーターっていうわけじゃないけど僕の担当していた音楽番組の編曲をやってもらったりしてましたから、今じゃ考えられない、おおらかな時代でした。
ある時僕がTBSにいて、テレビのモニターで自分が担当したすぎやまくんの番組をこっそり見ていて、ふっと後ろを振り向いたら、局長以下、お偉いさんが立っていて睨まれたなんてこともありました(笑)。それでも当時はテレビ局の垣根なんて関係なく、面白いものを作ろうという空気が現場にはありました」
すぎやまさんとの交流はその後も続き「2か月前くらいに電話をかけたけど出なかった。いつも必ず翌日返事があるんだけど、それがなかったから心配していた」という砂田氏。“戦友”の死を悼んでいた。
※週刊ポスト2021年10月29日号