マンションが新築、中古にかかわらず売れている。コロナ禍で多くの業界が売り上げ減少に苦しむ中、分譲マンションを販売する不動産会社や住宅メーカー、中古マンションの売買を手がける不動産仲介会社は売り上げ拡大が続いている。特に首都圏の中古マンションにその傾向が顕著で、成約価格が16か月連続して上がり続けているのだ。なぜ、そんなに売れているのか、今後もこの傾向は続くのか――。住宅評論家の山下和之氏がレポートする。
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2020年に新型コロナウイルス感染拡大が本格化した当初は、ほとんどの不動産会社が営業自粛したこともあって、マンションの売れ行きが鈍化し、価格も低下したが、夏には購入希望者が動き出し、価格も上昇に転じた。以来、中古マンション市場の活況が続いている。
2021年9月の首都圏中古マンション成約価格の平均は3985万円で2020年8月の3693万円に対して、前年同月比7.9%の上昇、いよいよ4000万円台が目前に迫っている(別掲図1参照)。
調査に当たった東日本不動産流通機構によると、首都圏中古マンションの成約価格の上昇は2020年6月以来のことで、これで16か月連続して上がり続けていることになる。折れ線グラフをみると、2020年後半からなだらかな右肩上がりを続け、2021年8月には伸びが鈍化したものの、9月にはやや落ち込んだ部分をカバーするように、大幅に上昇した。
新築の半値で手に入る中古マンション
なぜこんなに上がっているのか。最大の要因が、新築に比べての価格の安さにあるのは間違いないだろう。成約価格が4000万円に迫っているのだから、決して安いとはいえないかもしれないが、新築に比べると断然に安いのだ。
民間調査機関の不動産経済研究所によると、2021年8月の首都圏新築マンションの平均価格は7452万円。同月の中古マンション成約価格は3773万円だから、中古マンションなら新築のほぼ半値で手に入る計算。
もちろん、エリアや物件の条件などによって価格は大きく異なるし、中古だと購入時に仲介手数料、購入後にリフォーム費用がかかることが多いなどの問題はあるものの、この差は大きい。
しかも、首都圏における新築マンションの供給はかつての年間10万戸近いレベルから、最近は3万戸前後まで減少しており、希望エリアで希望に合う物件を探しにくくなっている。それに対して中古マンションの新規登録は20万件前後であり、中古マンションならいつでも、どこでも探せるメリットもある。