北朝鮮では金正恩・朝鮮労働党総書記が「子供は国の宝。祖国の未来である子どもを立派に育てること以上に重大な革命事業はない」などと語り、若い夫婦を中心に出産を奨励し、「国の負担で、子供たちに牛乳やチーズなど乳製品を与えよう」などと指示していることが明らかになった。
しかし、北朝鮮では昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大で、国民に食糧が行き渡っていないのが現状で、毎年少子高齢化傾向が進んでいるという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮政府は最近、地方の党委員会などに対し、「5歳以下の子供がいる家庭を調査し、子供たちの健康状態を把握して、標準体重に達していない栄養失調の子どもたちの治療と療養のために母親と一緒に入院させる作業を積極的に行うべきだ」と指示したという。
また、北朝鮮政府は企業や学校、政府機関などに対し、「週に一度、妊婦や5歳以下の子供に乳製品や牛乳などの加工食品を国家価格で販売すべきだ」と要請した。
突然の「子供たちに乳製品を」という指示の裏には、金総書記が今年1月の第8回党大会で、子供たちの養育は「重大な革命事業」であるなどとして、若者の人口の増加が重要だと強調したことがある。
これを受けて、各地方政府は「党が子どもを育てる責任があることを現実的に証明して、安心して子どもを産めるようにすべきだ。 また、地方政府は子育ての重要モデルとなるべきで、 各地域は妊婦や子どもの状況を調査する作業や乳製品などの供給活動を行うべきだ」との通達を出している。
しかし、現実は逆で、米中央情報局(CIA)の「ザ・ワールド・ファクトブック」によると、今年7月時点で、北朝鮮では合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)は1.91と世界128位と低迷している。
それとは逆に、北朝鮮では65歳以上の高齢者は251万8207人で全体の9.75%となり、昨年同期比で0.1ポイント上昇している。
金総書記の号令も北朝鮮社会の高齢化に対する危機感を表しているようだ。