超短期決戦を選んだ岸田文雄・首相だが、総選挙情勢は「大敗ライン」の自民党単独過半数(233議席)を割り込むか、なんとか単独過半数を維持できるかの瀬戸際に立たされている。
そして、総選挙後の政権運営にも不安は残る、これまで連立相手の公明党と太いパイプを持ち、連立を維持してきたのは菅義偉・前首相と二階俊博・前幹事長だ。
「二階さんは公明党との交渉窓口、菅さんは創価学会中枢と強く結んで重要政策の根回しから選挙協力まで話し合ってきた。岸田首相に公明や学会中枢とのパイプは全くないし、甘利明・幹事長はじめ現在の党執行部にもそれができる人はいない」(自民党3役経験者)
今回の選挙戦でもそれが問題になった。公明党が選挙協力をする自民党候補に推薦を出すにあたって、“言うことを聞かなければ推薦しない”とよりによって選挙の指揮をとる甘利明・幹事長を第1次と第2次推薦者リストから外して揺さぶりをかけたのだ。
自民党側が折れて比例名簿順位で公明党の希望する自民の候補を上位に置いたことで甘利氏も公示ギリギリで公明推薦をもらうことができたが、自民党幹事長を推薦しないなど菅・二階時代には考えられない事態だった。
「これまでは自民党の言うことをおとなしく聞いていた公明党が、菅さんと二階さんが失脚した途端に牙を剥いてきた」(同前)
菅・二階連合とパイプが太い公明党が岸田政権の力を削ぐ方向に動き出した。岸田首相が自公連立を円滑に維持していくには、ここでは菅・二階氏に頼らざるを得なくなる構図だ。
※週刊ポスト2021年11月5日号