発足当初から波乱含みの岸田政権の命運はどうなるのか。週刊ポスト恒例「老人党座談会」。政界の長老、亀井静香氏、山崎拓氏、藤井裕久氏の3人が長年培った政局観で占った。(全3回の第2回)
藤井:私は自民党の中のことはよく分かりませんがね、二階さん(俊博・前幹事長)については前から「小型カネマル」(金丸信)だと言ってきました。空気で動く人なんです。人の上に立つ人は空気で動いちゃいけない。物事の基本原則がなければいけない。特に国家観、歴史観がなければいけない。二階さんはその点が欠けているし、それは3A(安倍、麻生、甘利)も似ている。
その点で、財務事務次官(矢野康治氏)がバラマキを批判した(『文藝春秋』11月号)ことに関しては、私は正しいと思っています。ただし限度がありますね、役人の限度というものが。確かに、僕らの世代は大蔵省では政治家をバカにしていましたよ。あんな奴の言うこと聞く必要ないんだ、役人の道を歩めばいいんだと。
亀井:昔からね、大蔵が国家なり。政治家が政策を立案し、ぴたりと当たるようなことはなかなかできない。やはり役所の中のトップである財務省が日本の将来をどうしたらよいか、どこに予算をつけたらいいかなと考え、それに自民党が乗っかっていたわけです。
私は自民党の政調会長やったけどね、それまで大蔵省が政府の予算を決めていたのを「駄目だ」と言った。そのとき財務省の武藤(敏郎・主計局長。後の事務次官)を呼びつけて、「お前たちは好き勝手に予算やってたけどな、来年からはそうはさせない。お前たちはそろばん勘定だけやれ。あとは党が全部やる」と申し渡したことがあった。彼らはかなり抵抗したけどね。
藤井:役人が政治家の言うことを聞くようになったのは、内閣人事局の役割が相当大きかったと思います。その意味では今回の(文春の)寄稿文は近年では異例でした。
山崎:私も財務次官の言っていることは全部正しいと思う。事前に根回ししていたようだし、財務大臣だった麻生太郎さんは何も分かりませんから、何でもウンウンと聞いていたと。そういうことでしょう。
ただ、麻生さんはこれまで安倍さんにおもねって、さんざん放漫財政をやった。アベノミクスに協力するという大義名分で、何もブレーキを掛けなかった。経済産業省にグリップされて、経産官僚がカネをばらまいてきたツケが今に至るのでしょう。