地方では様々な町おこしが行われている。とくに1980年代後半は、各市町村に1億円を配る「ふるさと創生事業」が実施されたこともあり、各地で地域振興のための大胆なアイデアが実現した。
その代表的なもののひとつと言われているもので、現在も続いているものに石川県羽咋市の「UFOのまち」アピールがある。1986年、羽咋市の臨時職員だった高野誠鮮(じょうせん)氏は、遠い昔に羽咋で謎の飛行物体が頻繁に目撃されていたことを古文書で知り、「UFO町おこし」を思いつく。
まずはUFOうどん、UFOお好み焼きなどグルメ関連で世の関心を呼び、1990年11月には海外の宇宙飛行士やUFO研究家らを集めて「宇宙とUFO国際シンポジウム」を開催した。
「大学卒業後に科学ジャーナリストとして活動した頃のツテを頼るとともに、NASAや旧ソ連に直接国際電話して交渉しました。参加予定だったアポロ11号の宇宙飛行士が直前に急病になったり、公安から『旧ソ連の軍人は自衛隊基地のある小松の空港に降ろすな』と厳命されるなどハプニングだらけでしたが、フタを開ければ5万人近くの人が集まって大盛況でした」
1996年には、UFO町おこしの拠点となる宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」が開館。「本物」の展示にこだわる高野氏はNASAやロシアに乗り込み、実際に使用された月面・火星探査機や宇宙カプセル、現物の月の石などを入手した。
「周囲から『税金の無駄遣いだ』と批判されて農林水産課に飛ばされたこともありました(苦笑)。でも他に誰もやってないUFO町おこしは必ず羽咋の財産になると信じ、“どうすれば実現できるか”だけを考えて突き進みました」
※週刊ポスト2021年11月5日号