もはや現代病といっても差し支えないほど悩む人が増えている「うつ」。原因の多くが“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンの減少だという。セロトニン研究の第一人者で医師の有田秀穂さんが解説する。
「セロトニンを多く分泌させるには、その材料となる栄養素を摂ることが欠かせません。主な栄養素は、必須アミノ酸のトリプトファンです。この成分は体内では生成することができないため、食べ物から摂取する必要があります」
そして、セロトニンを分泌させる食材として専門家が推薦する食材は納豆、バナナ、豆腐、鮭、アーモンド、ヨーグルト、牛乳、みそ、さつまいもなど。どれも身近なものばかりで、少しメニューに気をつければ、セロトニンを分泌させるために欠かせないトリプトファンをたっぷりと摂ることができそうだ。
ただし、落とし穴もある。管理栄養士の圓尾和紀さんが解説する。
「セロトニンの分泌において糖分はある程度必要ですが、摂りすぎには注意してほしい。砂糖を摂りすぎると腸内環境に悪影響を及ぼすうえ、血糖値の乱高下が生じる。血糖値が急激に下がるとイライラしやすくなります。こうした精神状態の不安定さはうつにもつながるので気をつけてほしい。
例えば料理に砂糖10g程度を使うなら問題ありませんが、糖質が100g入っている甘いお菓子は避けた方がいい。血糖値の上昇を避けるため、白米を食べるなら食事の最後にしましょう」
食事の内容とともに意識したいのはこれらを食べる“時間”だ。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長の白濱龍太郎さんはいう。
「セロトニンは起きているときに合成されるため、朝からしっかりトリプトファンを摂ってほしい。朝からセロトニンが合成されれば、その日一日を活発に活動することができます。さらにセロトニンが原料となるメラトニンは、良質な睡眠に必要な物質です。セロトニンがメラトニンになるまで13〜14時間ほどかかるため、睡眠リズムを整えるうえでも、朝の食事でトリプトファンを摂ることは大切なのです」