多くの人に愛されるゴルフ。大物俳優のなかでもゴルフ愛好者は多い。舘ひろしや神田正輝など、シングルプレーヤーが数多くいる石原軍団にあって、昨年8月に亡くなった俳優・渡哲也さんもシングルの腕前で知られていた。そんな渡さんを“ゴルフの師匠”と呼ぶのが、フリーアナウンサー・みのもんた氏だ。みの氏が振り返る。
* * *
渡さんとのお付き合いは50年近く前からですね。最初は銀座でよく会っていたけど、僕が文化放送でレギュラー番組を持っていた頃に、「吉永小百合さんをゲストに呼びたい」と言ったら、渡さんが本当に連れてきてくれた。それから“兄貴”と呼ぶようになりました。
最初にゴルフに行くことになったのも、飲んで騒いでいるうちに盛り上がってそういう話になったんです。僕はまだ初心者で、渡さんはイロハから教えてくれた“ゴルフの師匠”でもあります。
夏場にはウチのオヤジから子供までみんな連れて箱根に行って、渡さんと奥様と一緒にゴルフ合宿もやりました。忙しい方だから長くて3泊4日。箱根にある「仙石ゴルフコース」が多かった。
渡さんのゴルフはとにかく豪快。石原軍団はみんな飛ばすけど、渡さんは特にドライバーが得意な飛ばし屋だった。それでいて気配りができる。マナーや謙虚さを大切にしていて、プレーもさることながらそういう面も最高でしたね。
マナーの中で一番言われたのは、“ゴルフは静かにやらないといけない”ということかな。隣のホールの声が聞こえてくるのは一番ダメと教えられました。だから僕もゴルフ場ではデカい声では喋らないし、大声で笑ったりしない。渡さんはどちらかといえば無口な方だからね。弟子も静かにしますよ(笑)。
〈夜の銀座で盛り上がることと、朝が早いゴルフは両立しづらいように思えるが、みの氏は「そこも師匠の“厳しい教え”があった」と笑う〉
渡さんから一番厳しく教えられたのは、前の晩の酒の飲み方ですね(笑)。ついつい飛ばして飲んでしまうから、渡さんに「飛ばすのはボールだけ。酒は飛ばしちゃダメだからね」と言われた。渡さんは朝が早い。こっちがいつもは寝る時間に集合なんだから、ゴルフの前の日は飲めないですよ。何から何まで細かく、きちっとした人だった。
渡さんは電話ではなく必ずFAXを送ってくるんです。ゴルフの予定の確認も綺麗な自筆で送ってくれる。そのFAXは今も大事にとってあります。宝物ですよ。