【著者インタビュー】畠山理仁氏/『コロナ時代の選挙漫遊記』/集英社/1760円
泡沫候補の呼称にあえて異議を唱えて〈無頼系独立候補〉と呼び、可能な限り全候補者に生で会うことを信条とする、畠山理仁氏。その成果の1つが開高健賞受賞作『黙殺』(2017年)だろうが、昨年以降はコロナが蔓延。選挙取材も大きく制限されることとなった。
そうした逆境にもめげないのが本書、『コロナ時代の選挙漫遊記』である。昨年3月の熊本知事選や7月の東京都知事選。大阪都構想を巡る11月の住民投票から、最直近は今年8月の横浜市長選まで、畠山氏は各地の計15選挙に臨場し、現場の空気感までも具にリポート。あいにくコロナ下とあって漫遊とはいかなかったが、それはそれでGo To乗じて宿代を節約するなど、旅は知恵と心意気次第だ。
〈選挙は返品不可能な高額商品を見定める機会〉だと畠山氏は書く。だからこそ現物を生で確かめることが、コロナ下でも大事なのだと。
選挙との出会いは『週刊プレイボーイ』の記者時代。
「当時僕はニュース担当で、毎週企画会議の前に焦って読む新聞に必ず選挙結果が載っていることに気づいたんですね。中でも気になった中松義郎さんを取材したのが最初。その後、大川興業の大川豊総裁のお供で、各地の選挙現場を見に行くようになりました。つまり全候補を見たいと最初に言ったのは総裁なんです。
実際に会うと候補者の皆さんの熱量は圧倒的でしたね。一定の支持を集めなければ没収される高い供託金など、障壁や負担も大きいだけに、熱い思いを抱えている。中には『これはいいな』と思う政策もあって、その提案者が毎回イロモノ扱いされて終わりじゃ勿体ない。いい政策は誰が使っても社会のためになる。当選者はパクればいいし、社会全体で共有すればいい。政策的な進化を図る機会として、選挙をもっと利用すればいいと思うんです」