中国吉林省の吉林刑務所に服役中の北朝鮮から密入国してきた北朝鮮人の囚人が、10月18日夜に脱獄、いまも行方が分からないことから、吉林省政府はこの脱獄囚を捕まえた人には15万元(約255万円)、情報提供者には10万元(約170万円)の報奨金を出すことを公表した。
この脱獄囚は、刑務所内での服役態度が良いとして5回表彰され、減刑された模範囚だった。あと1年あまりで刑期満了となるため、その後、北朝鮮に強制送還されることを恐れての脱獄とみられる。ネット上では、「この模範囚が脱獄した気持ちは良く分かる。省政府もこの囚人の気持ちを考えるべきだった」などとの書き込みがあった。
中国の通信社「中国新聞社」によると、この朱仙堅受刑者は、1982年10月13日生まれの39歳の男。身長160cmで脱獄時には囚人服を着ており、一見して、すぐに脱獄囚と分かる服装だったという。
朱受刑者は18日午後6時ごろ、すべての労働が終わった食事の時間に、警備が手薄な刑務所内の庭に出て、用意していたロープを壁の鉄条網にひっかけて、6mある壁に上り、そのまま外側に飛び降りた。10秒ほど、地面にうつぶせになっていたが、その後、駆け出して、民家がある丘に向かって逃走していったという。
刑務所では新型コロナウイルス対策で、刑務官は刑務所内で仕事をするよう指示されており、警備の手薄なところを突かれた形だ。
朱はもともと北朝鮮の咸鏡北道の炭鉱労働者で、2013年に豆満江の対岸にある中国吉林省の延辺朝鮮族自治州図們県に川を渡って密入国。同県の民家に押し入り、老女をナイフで脅して現金1482元や銀行の預金通帳を盗んだあと、彼女をナイフで刺して重傷を負わせたという。その後、タクシーで逃走したが、怪しまれて、通報され、逮捕された。2016年に懲役11年3カ月の判決を受けたが、2017年と2020年に減刑され、脱獄時点で、刑期は1年あまりだったという。
吉林省政府が15万元もの高額な報奨金を出すのは、朱が自暴自棄になって、付近住民の家に押し入って、再び強盗などの挙に出るのを恐れているためだとみられる。
中国メディアは脱獄の動機について、「朱は北朝鮮に強制送還されるのを恐れていた。帰れば、死刑になるかもしれないからだ」などと報じている。ネット上では「少なくとも、北朝鮮に帰るよりも、まだ中国の刑務所にいた方が居心地はよかったのだろう」などとのコメントが書き込まれている。