近年、政府の推進策もあってジェネリック医薬品(後発医薬品)は急速に普及している。調剤点数の優遇制度も設けられ多くの病院がジェネリック優先の方針を取るが、一方で極端に使用割合が少ない病院もある。なぜ、その病院はジェネリックを処方しないのか──。
全国でジェネリックを巡る“事件”が相次ぐなか、厚生労働省も本格的に動き出した。契機となったのは、昨年発覚したジェネリック大手の「日医工」(富山市)や「小林化工」(福井県あわら市)の不祥事だ。
日医工では、昨年までの少なくとも10年間、医薬品の製造工程や出荷検査で組織ぐるみの不正が続けられたことが昨年2月に発覚。同社は今年1月、抗アレルギー薬や胃腸薬、降圧剤や糖尿病治療薬など75品目を自主回収した。
小林化工でも、同社製の経口抗真菌剤(水虫薬)に誤って睡眠導入剤の成分が混入し健康被害が多数報告されていたことが、昨年12月に発覚した。この事態に厚労省は、今年6~7月、全国一斉の抜き打ち検査を実施。
対象施設がない沖縄県を除く46都道府県から1か所ずつ、ジェネリック製造32施設を含む医薬品工場を選定し、立ち入り検査を行なった。
その結果、医薬品医療機器等法違反(承認された方法とは異なる方法で製造)が1施設、GMP省令(医薬品の製造管理や品質管理の基準に関する省令)における「中程度の不備」が9施設、それぞれ確認された。厚労省によると、「中程度の不備」とは〈品質への影響を否定できず(中略)改善が必要な場合〉のことだという。
調査後、厚労省の担当者は『週刊ポスト』の取材に「この1~2年は後発医薬品メーカーの製造管理体制の不備が多い」と回答した。
その一方で、国の「ジェネリック推進」の動きは強まる一方だ。
医療費削減を目指す政府は、患者側にジェネリックを使用するよう“啓発”を続けながら、医療機関などには“インセンティブ”を設定している。それが「後発医薬品使用体制加算制度」だ。
薬局や病院がジェネリックの処方割合に応じて加算点数を受け取れる。近年は報酬改定のたびに基準が上がっており、2018年3月までは病院で70%以上、薬局で75%以上の処方割合で最高点数(病院4点、薬局22点)だったのが、現在は病院・薬局とも最高点数(病院5点、薬局28点)のためには85%以上の処方割合が必要になった。
2018年4月には減点(処方が2割未満の薬局は2点減点される)も設定。2020年4月からはそれが「処方4割未満の場合」となり、より高い水準が求められるようになった。