今年8月に亡くなった上方落語の重鎮の笑福亭仁鶴さんは、芸人の世界では漫才師・オール巨人と並ぶゴルフ好きとして知られた。関西ローカルの『大阪ほんわかテレビ』で24年間共演した元よみうりテレビアナウンサー・森たけし氏が振り返る。
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仁鶴師匠には何度もゴルフに誘っていただきました。『大阪ほんわかテレビ』のコンペもあったし、番組レギュラーの(笑福亭)笑瓶さんや大竹(まこと)さんと収録の翌日にプライベートで出掛けることも多かったです。
とにかくゴルフが大好きで、収録の合間にも、グリップを握るポーズやスイングをしながら“こうやったらええらしいわ”とやっていましたね。練習場もマメに行かれていたようで、研究熱心でした。一番の聞き役が笑瓶さんで、ゴルフをやらない(桂)南光さんとかは話に入っていけないとボヤいていましたね。
収録の合間にゴルフの話はたくさんするのに、カメラが回ると仁鶴師匠はあまりしゃべらない。自然体というか、やる気があるのかないのか分からない(笑)。周囲が仁鶴師匠に振ったところで、きちんと笑いを取って話にオチがつくというパターンでした。
落語の稽古では厳しい師匠だと聞きますが、ゴルフではミスショットしても怒り出すようなことはなく、いつもニコニコしていましたね。下手なゴルファーにも、キャディさんにも優しかった。見た目はちょっと怖いですが、ゴルフ場ではすごくいい人でした。
とにかくパワフルなゴルフで、ドライバーが飛ぶんです。20歳若い私のずっと先まで飛んでいましたからね。自宅ではゴルフのための筋トレにも熱心だったようで、スコアは叩いても90まで。それでも、オール巨人さんの飛距離が羨ましいとボヤいておられました。とにかく真剣に取り組んでいましたが、もちろん時には芸人らしくギャグもおっしゃる。グリーン手前の花道にボールが行くと、“はなみち(花菱)アチャコ”とかね。
〈芸人が集まるゴルフとなれば、昼食休憩の間も話が尽きない。そんな様子も印象に残っているという〉