「薬と薬」、あるいは「薬と健康食品・サプリ」の飲み合わせ次第では、思わぬ副作用が出ることもある。一方で、「薬と日常の食事」にも、注意すべき組み合わせが存在する。
アルコール類は薬の服用中は摂取しないよう指導されることが多い。例えばビールは、解熱鎮痛剤の非ステロイド性抗炎症薬との飲み合わせで潰瘍や出血のリスクが高まる恐れがある。同じくワインは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬との飲み合わせで過度の眠気が引き起こされるリスクが高い。
また一般的に健康なイメージのある食品にも、薬との併用でリスクが指摘されるものがある。
特に危険なのがグレープフルーツだ。降圧剤(カルシウム拮抗薬)、脂質異常症治療薬(スタチン系)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬など多くの薬との相性が悪く、いずれも薬の作用を過度に増強する恐れがある。医薬情報研究所エス・アイ・シー取締役で薬剤師の堀美智子氏が語る。
「グレープフルーツには薬物代謝酵素(CYP3A4)の働きを阻害する成分が含まれています。これを食べると薬の代謝分解が抑制され、結果、何倍もの薬を飲んだのと同じ状態になり、薬の作用・副作用が強まります。特にカルシウム拮抗薬や一部のスタチン系薬、一部のベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方時には『食べないように』とされています」
見落とされがちな点として堀氏は、「和製グレープフルーツとも呼ばれるぶんたん(ザボン)のほか、スウィーティ、ジャクソンフルーツにも同様のリスクがあるので注意が必要」という。
リンゴで血糖値に異変
「健康に良い」食品にも注意が必要だ。ミネラル豊富なコンブ、健康ジュースとして飲まれるノニは、それぞれ降圧剤のACE阻害薬、ARB薬との併用で高カリウム血症のリスクがある。
納豆などの原料で植物性タンパク質が豊富な大豆は、糖尿病治療薬と合わさると薬の作用が増強して血糖値が過度に低下する恐れがあるため、「一緒に摂取する際は慎重に様子を見てほしい」(銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏)という。
長澤氏が「厄介だ」と指摘するのがリンゴだ。糖尿病治療薬チアゾリジン薬の服用中は血糖値を上昇させる恐れがある。
「糖尿病治療薬の服用時は、糖の吸収を抑える働きをする食品との併用で血糖値を下げてしまう低血糖のリスクに注意が必要ですが、反対に、リンゴのように血糖値を上昇させて薬の作用を妨げるものもあります。薬を飲んでも血糖コントロールが上手くいかない方は、食べ物の影響を受けている可能性があるので、積極的に医師や薬剤師に質問すべきでしょう」(長澤氏)
※週刊ポスト2021年11月12日号